いい考え方

喜びを感じる力を高める(日野原重明)

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喜びを感じる力を高める

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日野原重明著『私の幸福論』という本を読みました。とてもよい本です。

ご存じと思いますが、日野原先生は、聖路加国際病院の理事長・名誉院長の他、多くの役職につかれ、多方面でご活躍中だった方です。

日野原先生のすごいところは、105歳まで現役の医師として働かれていたことです。

100歳を越えても朝から夜まで一生懸命に働かれて、心はもちろん、体もお元気でした。

たとえば、足腰は強く二時間程度の講演は、立ったままで話しつづけられました。

もちろんそれなりに秘密があります。

たとえば、歩くことは、脳や体の活性化のためにとてもよいことですが、
日野原先生は日頃から歩くことをまったく厭いませんでした。

それどころか、積極的に歩くようにされていました。

たとえばエレベーターやエスカレーターは極力使わず、階段を一段、ときには二段飛ばしでのぼるなど。

このようにスポーツをする時間がとれなくても、日頃から健康のために心がけ、体を鍛える習慣を実行していらっしゃたのです。

さて、その日野原先生はどのような「幸福観」を持たれているのでしょうか?

それは、彼が若い頃に味わった悲しみや絶望と無縁ではありません。

医学の道を志した大学一年の終わりに、彼は突然、結核になってしまいます。

結核が死病と恐れられていた時代です。

特別な治療法はなく、半年以上もの高い熱が続く闘病生活が続きました。

家族の手厚い看病を受けながらも、いつも死を間近に感じる日々・・・

大学での学びが遅れる焦り・・・、結局、8ヶ月の間、トイレに立つことさえできず、大学は1年間休学しました。

絶望と焦燥感の日々を送りました。

しかし、このときの辛い苦しい闘病生活が、後に医師として患者さんに向き合うときにどれだけ助けになったかわからないと彼は言います。

彼がいつも患者さんの苦しみや悲しみに寄り添う医師でありたいと願い続けてきたのは、彼自身も同じような体験を経て、乗り越えてきたからなのでしょう。

「生きていくことに、悲しみはついてまわります。
けれども、悲しみの数よりもはるかに多くの喜びが
人生には用意されている、そう私は信じています」

 日野原重明著『私の幸福論』(大和書房)

さて、日野原先生の言葉には、次のような一文が続きます。

 「そしてまた、喜びを感じとる能力というものがあると思っています」

どうやら、この能力が人間の「幸福」を左右するらしいのです。

あなたはどんなときに喜びを感じますか?

おいしいものを食べているとき?

したかったことをしているとき?

好きな人といっしょにいるとき?

そんなときに、わたしたちはふつう喜びを感じるものですね。

他には・・・?

健康であって体に痛いところも悪いところもないとき?

お金がたくさんあって、ほしいものが手に入ったとき?、

したことがうまくいったり、みんなから誉められたりしたとき?

そんなときにも、わたしたちはふつうは喜びを感じるものですね。

でも、そうでないときも、人間には喜びを感じとる力があるようです。

そうです。

人間はすごいのです。

たとえ、病気であっても、お金がなくても、誰からも誉められなくても、人間には喜びを感じる力があるのです。

そういう逆境のなかでさえ、人間には喜びを見い出せる力があるのです。

「たとえ死の病に冒され苦痛にあえぎながらも、
さわやかな季節の風を感じて感謝する人、

ほんのひとくちでも家族とともに同じ食事を味わえることに
満足の笑みを浮かべる人、

そうした患者さんに出会うたびに、
この方はなんと喜びの感度が高いことかと私は感嘆します」

日野原重明著『私の幸福論』(大和書房)

もちろん病気になど、ならない方がよいのですが、そんなときでも人間には、喜びを見出し、喜びを感じる能力があるのですね。

「幸福とは、心が満たされて幸福だと感じる主観的な感覚」と日野原先生はおっしゃいます。

そうです。幸福への感覚は主観的なものです。

置かれている状況やもっているものにかかわらず、幸福を感じられる人は感じられます。

自然の美しさ。

まわりの人の思いやり。

自分の命。

それらが決して当たり前ではなく、自分へのプレゼントであると気づくとき、

人は喜びを感じることができるのです。

いま与えられているものを感謝しながら受けとめるとき、

人は喜びを感じることができるのです。

自分は決して見捨てられているのではなく、

いまこのときにも、愛されているのだと気づくとき、

人は喜びを感じることができるのです。

私たちもこの喜びを感じる能力を高めていきたいものです。

喜びを感じる能力を高めよう。過去と今に感謝することから・・・