仕事を通して自分も人も幸せになることができます。
そんなことを考えさせてくれた本を読みました。
人を幸せにする話を書こう
誰かの人生の伴走者になりうるような小説を書けたら、と心から祈っています。
髙田 郁(時代小説作家)
『みをつくし料理帖』シリーズ、『銀二貫』などで大人気の時代小説作家・髙田郁(かおる)さんのエッセー『晴れ ときどき涙雨 髙田郁ができるまで』を読みました。
法曹界を志し、挫折を味わったこと。
交通事故に遭い、後遺症に苦しんだ日々のこと。
阪神・淡路大震災の経験など。
漫画原作者としてデビューした高田さんが、時代小説を書くようになったきっかけは何でしょう。
山本周五郎の短編です。
亡くなったお父さんが山本周五郎の大ファンだったこともあり、物心ついた時から周五郎作品に馴染んでいたそうです。
40台の頃、周五郎の短編「なんの花か薫る」を読み返して、高田さんは衝撃を受けます。
「あの世界へ行きたい、ここまで表現できるようになりたい」
と夢を抱きます。
数年後、網膜に孔が開いたのを機に、「今、転身しないと後悔する」と思い、時代小説の世界へ転身したのです。
冒険でした。
成功する保証は何もありませんでした。
漫画原作者としての仕事は断って時代小説一本に賭けました。
けれど、書いても書いても、原稿がボツになる日々が続きました。
そんな時、ある編集者に言われたことがあります。
「高田さん、売れる時代小説の条件をご存知ですか?江戸市中が舞台であること、捕物などミステリー要素があること、剣豪ものであること。この3つですが、あなたの書くものはすべて、ことごとく外しています」
しかし、髙田さんは刃物で殺し合う剣豪ものは、どうしても書きたくありませんでした。
逆に、「売れる条件」を外したとしても、自分にしか書けないものを書こうと、腹をくります。
「料理で人を幸せにする話を書こう」
その信念のもと、さらに精進をし、後に大人気となった『みをつくし料理帖』シリーズが生まれました。
高田 郁さんの小説は、温かく読後感がさわやかです。
本を読んだ人の幸せを願う作者の願いが感じられます。
エッセー『晴れ ときどき涙雨』の「あとがき」には、こうあります。
「物心ついた時から今日まで、私は多くの本に出会い、生きにくさを軽減してもらいました。
ちりちりと焼けるような焦燥感や、底知れぬ悲しみを覚えた時も、本の中の一文に救われたことがあります。
ともすれば自己否定に走りがちな屈折した心に、しっとりと寄り添ってくれたのもまた、本だったのです。
だからこそ、私自身も、いつか、誰かの人生の伴走者になりうるような小説を書けたら、と心から祈っています」
仕事を通して幸せを生むことができる
この記事を読んでくださっている人のほとんどは、小説とか本とか別に書こうとは思っていないと思います。
ただ、どんな仕事をしていても、「誰かの人生の伴走者になりうるような」仕事は、できるのではないかと思い、紹介しました。
あなたの仕事で、誰かの悲しみが癒される。
あなたの仕事で、誰かが笑顔になる。
あなたの仕事で、誰かが元気になる。
そういうことは現実にあると思うのです。
どんな仕事でもいいのです。
料理でも、掃除でも。
製造業でも、営業でも。
物書きでも、雪かきでも。(冬になると「雪かきボランティア」があり、年配の方々に大変喜ばれます)
私たちは、仕事を通して人の幸せを祈ることができます。
その仕事を通して、人を幸せにすることができると思うのです。
たぶんあなたも、生まれながらに素晴らしい能力をもっています。
その能力は、仕事をし続けることでさらに高められるでしょう。
たぶんあなたも、生まれながらに素晴らしい心をもっています。
その心は、仕事をし続けることでさらに光輝くでしょう。
仕事は「仕える事」と書き、幸せは「仕合せ」とも書きます。
仕え合ってこそ、私たちは幸福になることができます。
あなたは、生まれながらに人を幸福にできる力をもっています。
あなたは、仕事を通して、人と自分を幸福にすることができます。
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【出典】高田 郁著『晴れ ときどき涙雨』