「人生、いつだってこれから。だれにも朝はかならずやってくる」
詩人の柴田トヨさんは、2013年1月に101歳の天寿を全うしました。
明治、大正、昭和、平成と一世紀を生きて、震災や空襲など様々な怖い体験もしてきました。
イジメや裏切り、寂しさなどから死のうと思ったこともあったそうです。
しかし、90歳になって始めた詩は、苦難を乗り越える前向きな言葉にあふれていました。
90歳を過ぎて、詩を書き始める
トヨさんが詩を書くことになったきっかけは、息子さんの薦めでした。
腰を痛め、趣味の日本舞踊が踊れなくなり気落ちしていた母親をなぐさめるためでした。
その時90歳を過ぎていましたが、産経新聞の「朝の詩」に入選した時の感動が忘れられずに、以後も詩作を続けました。
詩は、ベッドで横になっている時や、テレビを見ている時など、夜に生まれます。
出てきたテーマに沿って鉛筆でメモ書きをしておき毎週土曜、様子を見に来る息子さんに見せ、朗読しながら何度も書き直して、完成させます。
ですから、一作品に一週間以上の制作時間がかかったそうです。
詩作を通して気づいた大切なこと
トヨさんは、詩を作ることで、気づいたことがあったと語っています。
それは、人生、辛くて悲しいことばかりではなかったということでした。
どんなに辛いこと、悲しいことがあっても、自分は両親や夫、倅、嫁、親戚、知人、そして多くの縁ある方々の愛情に支えられてきたことにも深い気づきを与えられました。
詩集がミリオンセラー・映画にもなる
2010年、98歳で刊行された処女詩集『くじけないで』と、2011年に第2詩集『百歳』が累計200万部のミリオンセラーになりました。
一人暮らしが二十年以上続き、寂しいときもありました。
しかし、考えてきました。
「人生、いつだってこれから。だれにも朝はかならずやってくる」と・・。
トヨさんの半生は、トヨさんが好きだった女優、八千草薫さん主演で、2013年映画『くじけないで』(深川栄洋監督)になりました。
「九十八歳でも恋はするのよ。夢だってみるの。雲にだって乗りたいわ」(「秘密」より)
と詠ったトヨさん。
みんなを元気にする詩を書いて、ミリオンセラーになって、映画にもなって、2013年1月に101歳の天寿を全うしました。
すごいです!
あまりにもすごいです。柴田トヨさん。