いい話

心に太陽を持て。くちびるに歌を持て。

「心に太陽を持て。」という素晴らしい詩があります。

1989年に、児童文学者の山本有三さんが紹介した詩(ドイツの詩人・ツェーザル・フライシュレン作)で、いまも世代を越えて、心に勇気や元気を与えてくれます。

「心に太陽を持て。」

 心に太陽を持て。

あらしが ふこうと、

ふぶきが こようと、

天には黒くも、

地には争いが絶えなかろうと、

いつも、心に太陽を持て。

くちびるに歌を持て、

軽く、ほがらかに。

自分のつとめ、

自分のくらしに、

よしや苦労が絶えなかろうと、

いつも、くちびるに歌を持て。

苦しんでいる人、

なやんでいる人には、

こう、はげましてやろう。

「勇気を失うな。

くちびるに歌を持て。

心に太陽を持て。」

山本有三:編『心に太陽を持て』(改定版より)

▼勇気と元気がわいてくる詩ですね。

私も小学生のときに、この『心に太陽を持て』という本を読んで、いまでも忘れられない物語があります。

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「くちびるに歌を持て」

要約してお届けします。こんなお話でした。

 くちびるに歌を持て

イギリスの北部の海で、深い霧のために、一そうの船が大型船と衝突し沈没しました。

まっ暗な嵐の夜の海の中に、多くの乗客や船員が投げ出されてしまいます。

救助は難航しました。

冷たい海で救助を待ち、ただひとり暗い波の間に浮かんでいた男がいました。

男は疲れはて、もはや長くは泳いでいられないような気がしました。

死にたくないと、助けを呼びましたが、救助のボートはやってきません。

さっきまで、助けを求めてわめき叫んでいた声の数々波に飲み込まれ、あたりは墓場のように静まりかえっていました。

このままでは、こごえ死んでしまうのではないかと思った男は、手足を水の中で動かしながら、一心に祈りをささげていました。

すると遠くから、突然、きれいな歌が聞こえてきました。

その天使のような歌声に元気づけられ、男はその歌声の方へ霧の中を泳いでいきました。

すると、何人かの婦人が大きな材木につかまっているのを見つけます。

歌を歌っていたのは その中のひとりのお嬢さんでした。

元気を取り戻せたことに、男はお礼を言います。

しかし、しばらくすると、まわりの婦人たちは、救助が来ないことに、不満をもらし始めました。

男はそれにあいづちを打ちます。

ところが、お嬢さんはその会話には耳を貸さないで、また歌を歌い始めます。

いくらグチをこぼしても決して救命ボートはやってこない。
自分もお嬢さんの歌を聞いてここへ泳ぎついた。

男はそう気づくと、他の婦人たちにみんなが知っている童謡や民謡をみんなで歌うことを提案し、合唱がはじまります。

何曲も繰り返し、歌うのをやめてしまった人がいても、お嬢さんは合唱の中心になって美しい歌声をふるわせていました。

すると、遠くの方で何か音がします。

救助のボートでした。

それを見てグチを言っていた婦人は、声をたてて泣き出しました。

そこにいた全員はボートに引き上げられました。

みんな死人のようにぐったりしていましたが、男はお嬢さんの前に行って、丁寧に言いました。

「お嬢さん、あなたの歌が、わたしたちを救ってくださったのです。ありがとうございます。本当にありがとうございます」

▼くちびるに歌を持て。

心に太陽を持て。

私たちも、

辛いときでも、苦しいときでも、

希望を失わずに、愛をもって、

人の心を温かくするような言葉を
発することができればいいですね。

心に太陽を、くちびるに温かな言葉を・・・ (^.^)

作家 中井俊已 メルマガ「心の糧・きっとよくなる!いい言葉]より 

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【出典】山本有三編著『心に太陽を持て』 (新潮文庫)

「新編・日本少国民文庫」に収録され、世代を越えて読み継がれてきた
山本有三の掌編集を読みやすくリニューアルしたものです。

21篇の小話には困難に負けず明るく生きるというテーマが流れています。