いい言葉

詩「悩める人々への銘」(無名の戦士)

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詩「悩める人々への銘

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感動的な一つの詩をご紹介します。

2000年にヴァチカンで開催された「病人のための大聖年」の前夜祭で、元米国代表バレーボール選手が紹介し、世界的に話題になった詩です。

ニューヨーク大学付属ラスク・リハビリテーション研究所のロビーに掲げられた作者不詳の詩です。

それがわかったのは、つい先日、たまたま見つけた加藤諦三著『無名兵士の言葉』という本によります。

これは、この無名兵士の詩を加藤さんなりに解説している本です。

この本によると、この詩は、2002年3月、「中日新聞」の編集局長さんのコラム「編集局デスク」の「失意の若者へ」という記事のなかで紹介されました。

その記事には、編集長さんがこれまで経験したことがないほどのすごい反響があったそうです。

感謝の手紙、電話、メールが「中日新聞」に勘定できないほど届きました。

そのなかに「この無名詩を原文で読みたい」という人もいました。

原文といっても、編集長さんはガリ版刷りの日本文を孫引きしただけ。

さっそくニューヨーク支局の特派員に、現場での取材と原文の写真を送るように頼みました。

そうして、わかったのは次のようなことです。

この詩は、たぶん南北戦争に従軍した南軍の兵士がつくったものであろうとのこと。

この無名の兵士の詩が広く人びとに知られるようになったのは、1950年代、元大統領候補だったA.スティーブンソンがクリスマスカードに記したことがきっかけだそうです。

彼は52年と56年の大統領戦に民主党候補として出馬しましたが、二度とも、アイゼンハワー大統領に敗北。

失意のさなかに、彼は田舎の教会でこの詩をみつけ、深い感銘を受けたのです。

A.スティーブンソンから贈られたクリスマスカードに見て、ハーワード・H・ラスク博士(リハビリの父)も、この詩にいたく感動しました。

そこで、彼は銘板をつくり、自分が創立したリハビリテーション研究所のロビーに掲げたのです。

その後、この詩は、多くの悩める人々に慰めと感動を与え、世界中へ広がっていきました。

そして、いまも人の心から心へと旅を続けているのです。

  悩める人々への銘

大きなことを成し遂げる為に、
強さを求めたのに
謙遜を学ぶようにと弱さを授かった

偉大なことをできるようにと
健康を求めたのに
より良きことをするようにと病気を賜った

幸せになろうとして 富を求めたのに
賢明であるようにと 貧困を授かった

世に人々の賞賛を得ようと 成功を求めたのに
得意にならないようにと 失敗を授かった

人生を楽しむために あらゆるものを求めたのに
あらゆるものを慈しむために 人生を賜った

求めたものは一つとして与えられなかったが
願いは全て聞き届けられた
私は もっとも豊かに祝福されたのだ

 作者不詳

(原文)

A CREED FOR THOSE WHO HAVE SUFFERED

I asked God for strength, that I might achieve
I was made weak, that I might learn humbly to obey…

I asked for health, that I might do greater things
I was given infirmity, that I might do better things…

I asked for riches, that I might be happy
I was given poverty, that I might be wise…

I asked for power, that I might have the praise of men
I was given weakness, that I might feel the need of God…

I asked for all things, that I might enjoy life
I was given life, that I might enjoy all things…

I got nothing that I asked for―but everything I had
hoped for
Almost despite myself, my unspoken prayers were answered.
I am among all men, most richly blessed!

AUTHOR UNKNOWN

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ああしてほしい。
こうしてほしい。

ああなりたい。
こうなりたい。

あれがほしい。
これがほしい。

こういう望みがかなえたら、どんなにいいでしょう。

けれども、望みがすべてかなえられなければ、人間は不幸でしょうか?

そんなことはないと思います。

わたしたちには、ときに、
求めなかったものが与えられることがあります。

弱さ、病気、貧困、失敗もそうです。

けれども、それらは決して人を押しつぶせるものではありません。

そういう負の状態にあっても、人は前向きに生きていくことができます。

絶望することなく、誰も恨むこともなく、自分を磨き、何かを学び取って成長していくことはできるのです。

それは、なんと輝きのある人生なのでしょう。

この詩の最後の一行が特に好きです。

「私は もっとも豊かに祝福されたのだ」

作者は、数々の負の状態を与えられながらも、感謝しています。

負の状態を乗り越え、より深い幸福を感じ取ってとっているのです。

たとえ負の状態にあったとしても、決して幸福から遠ざかったわけではないのです。

たくさんのものに恵まれているはずです。

わたしたちもそれに気づくなら、感謝できるなら、生きる幸福を深く味わうことができるのではないかと思います。

与えられているものに感謝しよう。

出典:加藤諦三著『無名兵士の言葉』(大和書房)