「おもてなし」とは何でしょう?
茶道裏千家大宗匠、千 玄室さんに学んだことをお伝えします。
日本おもてなし学会での千玄室氏のお話
先日、日本おもてなし学会主催で、千玄室氏(日本おもてなし学会最高顧問)のお話があったので、お聴きしてきました。
千玄室氏は、あの茶道の創始者、千利休の子孫です。
千さんは、400年以上続いている茶道の家元の家に生まれ、6歳の6月から稽古を始め、15代家元になるべく育てられてきました。
昭和18年、同志社大学2年在学中に自ら志願して海軍に入隊。
飛行科に入り特攻を志願。
しかし出撃の直前に待機命令が出て生き残り、死んでいった戦友たちへのうしろめたさに苦しむ中、14代家元の父のもとにGHQが茶道を習いに来ているのを見て
「これだ! 文化の力だ! 戦争には負けたが、文化では負けない! お茶は世界平和の架け橋になる」
と気づき、伝統文化の継承に目覚めたそうです。
その後、
「一椀(いちわん)からピースフルネスを」
の理念のもとに世界62か国を300回以上訪問し、「茶道外交」を続けるなど、世界中で活動されています。
今回のお話のテーマは、「もてなしでないもてなし」。
93歳の高齢者(2016年11月時)でありながら、頭脳明晰でお元気でした。
シャキッとした姿勢で起立したまま、言葉があふれるように、1時間余り、お話されました。
千玄室氏が体験し考えるおもてなしとは・・・
その中で、こんな話がありました。
千玄室氏がアメリカに初めて行ったのは、25歳の時、敗戦の傷跡が残る1951年でした。
2年間、飛行機乗りとしてアメリカと戦い、そして負けた。そのアメリカに行って大和魂、「戦」の武人の大和魂ではなくて文化人の「文」の大和魂を知ってもらいたいと思ったのです。
けれども、ロックフェラー家に招かれたとき、逆に教えられ、感激したことがあります。
敗戦国の若造(自分)に対して、ロックフェラー夫人が、コーヒーや紅茶ではなく、日本のお茶を自ら立て、生憎、日本のお菓子はないのでと、
自ら焼いたクッキーを出して、もてなしてくださったのです。
そして、こうおっゃっていました。
「もてなし」は、語源的に「持って」「為す」業のこと。
「思いやりと謙虚な心」を「持って」「為す」ということ。
思いやりと謙虚な心で、人と人はつながる。
誰にでも、「思いやりと謙虚な心」があれば、おもてなしはできます。
「たとえば、外国人から道を聞かれて、英語がうまく話せなくても、ジャスチャーや表情で、何とか伝えることはできます。
おもてなしは、肩肘張ることなく、謙虚な心と思いやりによって、自然体でおこなうものです」
と、千さんはおっしゃっていました。
茶道も形やしきたりよりも、本来は、自然体の謙虚さと思いやりが大事なのだそうです。
茶道への認識が変わり、とても勉強になりました。
「もてなし」は、思いやりと謙虚な心を「持って」「為す」こと。
(^.^)
ちなみに、千玄室さんは90歳を超えたいまも、毎朝4時に起きて、半時間の運動。その後、しばらく書き物をされるそうです。
健康と認知症予防の秘訣かもしれません。