親や教師の何気ない一言が子どものやる気を引き出し、高めることもあれば、その逆もあります。
子どもに与える言葉の力は、大人が思う以上に大きいものです。
前の記事で、「子どもを勉強嫌いにする親の口ぐせワースト7」をご紹介しました。
そこで、それをどのように変えていけばよいのでしょう。
絶対的なものではありませんが、「子どもを勉強好きにする親の口ぐせベスト7」をご紹介します。
「ダメねえ」→「いいね」「すごいね」「よくなったね」
その子の存在や努力を肯定する言葉を言ってあげましょう。
「いいね」「すごいね」「よくなったね」など、ほめられ、認められるとやる気が出てきます。
個人的また男女別で、ほめ言葉は少し変えたほうが良いこともあります。
男の子には小さいうちからヒーロー願望があり、かっこよさや強さにあこがれます。「かっこいい!」「強い子だね」などと親からほめられると、男の子はもうノリノリ気分ではりきります。
一方、女の子は、小さいうちからプリンセス願望があり、美しさやかわいらしさに敏感です。「かわいいね」「かわいい子だね」と言われて育つ子は、自己肯定感を高めていけます。
「どうしてこんなことができないの?」→「どうすればできるようになるかな?」
できなかった原因を考えるのも必要ですが、より大切なのは子どもが前向きな気持ちになってやる気を出すことです。
「どうすればできる…?」は、前向きになれる言葉です。
この問いを発したら、子どもにじっくり考えさせ、その答えを待ちましょう。
親が「こうしなさい、ああしなさい」と口を挟みすぎると自主性が育ちません。
「もう少し練習すればできると思う」など、子どもからやる気のある答えを引き出せたら、それだけでOKです。
「物覚えが悪いわね」→「頭がいいね」「賢いね」
うまくできたときに、「頭がいいね」「賢いね」など肯定的な言葉で繰り返しほめられると、心理学でいう「暗示効果」が働き、だんだんその気になってきます。
頭の良し悪しは生まれつきのように言われますが、IQは変化しますし、脳をよく使うことで高まるのです。
「頭がいい」「賢い」と思っている子は、難しい問題に出合っても、自分の頭で考えようとします。
そして、ますます賢くなっていくのです。
「どうせ」→「だいじょうぶ。あなたならできるよ」
勉強で難しいことに出合うと、最初からできないと思ったり、ちょっとつまずいただけであきらめたりする子がいます。
自信をなくている子は、最初からそうだったのでありません。
何度かチャレンジして失敗して落ち込んで、しかもまわりの人から否定的なことを言われたのが心に残っているのです。
自信をなくている子には、親の肯定的な言葉かけが効きます。
「だいじょうぶ。あなたならできる」
子どもを信じて発する、温かな励ましです。
そして、できたときにほめてあげることで、子どもは自信をつけていきます。
「早く早く」→「いいね、いいね」「早いね、早いね」
親から見れば、超スローペースでしょうが、子どもにすれば、一生懸命がんばっているのかもしれません。
子どもががんばっているときは、「いいね、いいね」などとその行動を一つずつ、ほめて言ってあげたほうがいいです。
すると、自信をもち、その行動がしっかりできるようになっていきます。
早くできることが必ずしも良いとは限りませんが、「早いね、早いね」とほめてあげると、自信がつき、その行動がだんだん早くなります。
「お母さんの言うとおりやりなさい」→「あなたはどう思う?」
子どもがだんだん大きくなるにつれて、「(お母さんはこう思うけど)、あなたはどう思う?」と子どもに尋ねてみるといいと思います。すると、子どもは自分の頭で考えます。
「ぼく(わたし)はこう思う」というのは、自分の立派な意見です。
これからの時代は、人の意見を尊重し、自分の意見もきちんと言えるコミュニケーン能力の高い人材が活躍していきます。
「あなたはどう思う?」という言葉は、その能力を高めていきます。
「勉強しなさい」→「勉強って面白いね」「勉強って楽しいね」
成績の大変良い子は、「勉強しなさい」とあまり口うるさく言われたことがないそうです。
親が言わなくても、自分できるからでしょう。
ただ、そうなるには、それまで親の効果的な働きかけがあったのです。
一つの方法は、(ご自身の勉強で結構ですから)親も子どもといっしょに勉強して、その面白さや楽しさを伝えることです。
「勉強って面白いね」「楽しいね」「いろいろなことが分かって、うれしいね」などと親が心から語り続けるなら、勉強が好きになっていきます。
以上、7つご紹介しました。
お子さんへの言葉かけの参考にしていただければ幸いです。
(この記事は『PHPのびのび子育て』2017年3月特別増刊号に掲載した原稿から抜粋・修正したものです)