以前、学習塾で個別に小学4年生の子に国語を教えていました。
軽度の発達障害をもった子でした。
小3まで通っていた学童保育では、「人間じゃない」と罵倒されたこともあると、お母さんが言われていました。
この子の自己肯定感を育てるために「宝物ファイル」を作ってもらい、賞状や思い出の写真の他に、1枚の紙を入れて、毎週お母さんから「〇〇くんの良いところ」を一言書いてもらっていました。
私も毎週、A4一枚に紙に、少し長い文章を書いて入れてあげていました。
数年後にでも、気が向いたときに読んでくれればいいなと思ってのことです。
これからご紹介するものは、その手紙です。
振り返ってみると、〇〇くんに限らず、他の子にも言えるようなことばかり書いていました。
そこで、ご家庭や他の教育機関で、子どもを指導するときに、ご参考になればと思い、ご紹介していきます。
20枚ありますので、5つずつに分けます。
君の良いところ11 ~健康だということ~
〇〇くんの良いところは、大きなケガや大きな病気をしたことがないほど、健康だということです。
健康であることは、だれも望む、とても良いことです。
実は、生まれてすぐに病気で死んでしまう赤ちゃんはおおぜいいます。
それは、いろいろな理由からです。
たとえば、赤ちゃんがお母さんのおなかにいるときに、じゅうぶんに、健康に気をつけずに生活しなかったことで、赤ちゃんがよく育たずに弱ってしまうという理由もあります。
〇〇くんがじょうぶな体で生まれたのは、お母さんやお父さんのおかげでしょう。
とりわけ、じょうぶな体に生んでくれたお母さんに感謝するべきでしょう。
生まれてからも、赤ちゃんのときに、大きな病気や大きなケガをしなかったのは、まわりの大人(お母さんやお父さん、おばちゃん?)のおかげでしょう。
少し大きくなっても、大きな病気やお大きなケガをしなかってのは、〇〇くんも健康に気をつけているからでしょう。
次の文は、交通事故で自分の子どもをなくした親が書いたものです。
「危ないから、車には気をつけるのよ」と、子どもにいつも言い聞かせていました。
ところが、その日、自転車で道路をわたるときに、あわてたようです。
大型トラックが急ブレーキをかけましたが、はじきとばされました。
頭を強くうって、いしきがなくなりました。
すぐに救急車で病院にはこばれましたが、いしきはもどらず、死んでしまいまいた。
ほんの何時間前までは、元気ではしりまわっていた子が、私より先に死んでしまうな
んて、信じられませんでした。
泣いても泣いても、なみだがとまりませんでした。
〇〇くんと家族にこういうことがなくて、本当に良かったです。
2020年8月29日
君の良いところ12 ~優しいところ~
〇〇くんの良いところは、優しいところです。
これは、〇〇くんのお母さんが、幼稚園のころから友達のお母さんから聞かれたことです。
具体的にはどういうことか知りませんが、友達のお母さんは、二人が遊んでいる様子を見て、あるいは〇〇くんの言葉を聞いて、そう思われたのでしょう。
ところで、作者は不明ですが、こんな詩があります。
一つの言葉
一つの言葉でけんかして、
一つの言葉で仲直り。
一つの言葉で頭が下がり、
一つの言葉で笑い合い、
一つの言葉で泣かされる。
一つの言葉はそれぞれに、
一つの心をもっている。
きれいな言葉はきれいな心、
優しい言葉は優しい心。
一つの言葉を大切に、
一つの言葉を美しく
たとえば、
「ありがとう」「ごめんなさい」「いただきます」「ごちそうさま」
そんな平凡な言葉も、自分と人の心を優していきますね。
2020年9月5日
君の良いところ 13 ~素直にできたこと~
〇〇くんの良いところは、1週間、給食袋を毎日、持って帰ることができたことです。
お母さんによると、これまで(3年生、4年生の1学期まで?)あまりできていなかったそうです。
お母さんにとっては、これまで何回言っても、できなかった?ので、これが続けてできたのは、うれしいできごとだったと思われます。
給食袋を持って帰るのは、学校の先生から言われたからだと〇〇くんは言っていました。
学校の先生が言われたことを素直にできるのは、とても良いことです。
「素直さ」というのは、子どもも大人も成長していくために大切な徳です。
パナソニックという会社をつくった松下幸之助さんは、
「人間して伸びていく人には、素直さがある」
と言っていました。
松下幸之助さんは、会社の経営のとてもじょうずな人で、「経営の神様」とも言われて、なくなった、いまも尊敬されているひとです。
その人が、「素直さは大人にも、会社の経営にも大切だ」と語っていました。
素直な人は、必ず成長します。
子どもには、親や先生の言われること、理解できないこと、納得いかないと思えることがあるかも知れません。
でも、親や先生は子どもよろもはるかに知識と経験に富み、すぐれた力をもっています。
そして、子どもの成長を望んでいます。
子どもの幸せをねがっています。
ですから、たいていことは、親や先生の言われることを素直に聞きいれたほうが、子どものためになるのです。
〇〇くんは、「はい」という返事がよく言えます。
この「はい」という返事は、自分の心を素直にしていく最強の言葉です。
自分もまわりの人も幸せにしていく言葉です。
2020年9月12日
君の良いところ14 ~感謝の言葉が言えたこと~
〇〇くんの良いところは、この前「ありがとうございました」という言葉がはっきり言えたことです。
子どもの頃から、「何かいいことがあったら、感謝しなさい」と教えられてきたと思います。
小さい子どもも、おかしをもらった、いいことだとわかり、「ありがとう」と言えます。
でも、授業が終わった後、なぜ「ありがとう」と言うのか、わからないことがあると思います。
それは、授業で勉強できるのは、将来のためになるい良いことだからです。
そして、授業は一人でできるものでなく、先生や他の人(友達)といっしょにするものだからです。
実は、子どもだけでなく、先生にとっても、授業は勉強です。
どのように教えればよいのかを、子どもたちから習っているのです。
お互いに勉強しあって、賢くなっていけるので、いいことです。
ですから、いっしょに勉強してくれた人に「ありがとう」と感謝し合います。
ところで、感謝ができない子どもは、不幸です。
してもらって当たり前、感謝しなくてもいいと思っているのです。
本当は、してもらって当たり前のことなんかないのです。
たとえば、普通にごはんが食べられるのも、本当は当たり前ではありません。
もしも、親が「もう働くのがイヤになったからもう働かない」と仕事をしなければ、食材を買うお金もなくなります。
もしも、「食事を作るのは面倒だからもうやめた」と言って何もしてくれなかったら、食べる物がなくなります。
もしも、親が病気になったり、事故で入院したりしたら、ごはんどころではなくなります。
だから、今日普通に食事ができることは、実にありがたいことです。
ですから、食事のときは、感謝の気もちをこめて、「いただきます」「ごちそうさま」と言います。
2020年9月19日
君の良いところ15 ~良い点が取れたこと~
〇〇くんの良いところは、この前の漢字テストで良い点が取れたことです。
何が出題されるかあからじめ予告されている漢字の10問テストで、100点か、それに近い点を取れる子には、つぎのような特長があります。
1.普段から、練習(宿題)をしている。
2.テスト前に、出題範囲の練習をしてきている。
これらのどちかが完璧でないと、100点は取れません。
〇〇くんが100点、それに近い点を取れたのは、これらができたからです。
何が出題されるかあからじめ予告されている漢字の小テストは、がんばれば、満点かそれに近い点が取れます。
つまり、がんばったからです。
これは私が多くの小学生を見てきて、はっきりと言えることですが、
頭がすごくいい子でも、これから成績が悪くなる子は、この点を怠けます。
頭の善し悪しにあまり関係なく、
これから成績が良くなる子は、この点をがんばって続けられます。
1回、2回でなく、何度も何度でも・・・・。
つまり、成績が良くなる子は、「がんばり続ける」ことができるのです。
ある教育者は、このことを「努力の持続」と言います。
「努力の持続」は、何が出題されるかあからじめ予告されている漢字の10問テストの
結果でわかります。
「継続は力なり」と言います。
良いことを続けていくと、それが習慣となって、他の勉強にも良い影響と結果を生みます。
2020年9月26日