「誰もが誰かの犠牲によって生かされている。ならば生かされている者の使命とは何なのか。
自分がやるべきことは何なのか。失った仲間たちに恥じない生き方とは何なのか。」(千玄室)
千玄室氏は、2023年4月19日で100歳となられました。
千玄室氏とは、あの茶道の創始者、千利休の子孫です。
千さんは、400年以上続いている茶道の家元の家に生まれ、6歳の6月から稽古を始め、15代家元になるべく育てられてきました。
昭和18年、同志社大学2年在学中に自ら志願して海軍に入隊。
飛行科に入り特攻を志願。出撃の直前に待機命令が出て生き残り、死んでいった戦友たちへのうしろめたさに苦しみます。
しかし、14代家元の父のもとにGHQが茶道を習いに来ているのを見て「これだ! 文化の力だ! 戦争には負けたが、文化では負けない! お茶は世界平和の架け橋になる」と気づき、伝統文化の継承に目覚めたそうです。
その後、「一椀(いちわん)からピースフルネスを」の理念のもとに世界62か国を300回以上訪問し、「茶道外交」を続けるなど、世界中で活動されています。
人生100歳の元気の源
千玄室氏の人生100歳の元気の源は何でしょう。
一つは「茶道という日本の伝統文化を世界へ伝えたい」という情熱。もう一つは「海軍の特攻隊(特別攻撃隊)の生き残り」の使命感ではないでしょうか。
以前、日本おもてなし学会主催で、千玄室氏(日本おもてなし学会最高顧問)のお話があったので、お聴きしてきました。
そのお話のテーマは、「おもてなしでないおもてなし」
「もてなしとは、語源的に「持って」「為す」業のこと。「思いやりと謙虚な心」を「持って」「為す」ということ。思いやりと謙虚な心で、人と人はつながります。「思いやりと謙虚な心」があれば、おもてなしはできます。肩肘張ることなく、謙虚な心と思いやりによって、自然体でおこなうものです」
と、おっしゃっていました
茶道も、形やしきたりよりも、本来は、自然体の謙虚さと思いやりが大事なのだそうです。
93歳(2016年11月時)でありながら、頭脳明晰でお元気でした。シャキッとした姿勢で起立したまま、言葉があふれるように、1時間余り、お話されました。
その後、2023年4月「産経新聞」に連載された記事を読みました。
千氏は、4月19日で100歳。
いまでも、姿勢よく背筋が伸び、1時間の講演は起立したままされるそうです。
その健康の秘訣は何か、どこでもよく聞かれるそうです。
「別にどうということもないのです。しいていえば、年をとってもその年を忘れているからでしょう」と答えるのですが、無論、それ以外にも毎朝の習慣にあります。
毎朝の習慣も健康の秘訣
千氏は、朝4時に起床し、洗面した後は軽く海軍体操をします。ですから、身体が驚くほど柔らかいです。私も目の前で拝見したのですが、立ったまま前屈すると、手のひらが床にビタリと着くほどに柔軟なのです。
この体操が終わると、30分の座禅です。瞑想と言ってもよいでしょうね。座っているうちに頭がスーッとしてくるそうです。終わった後は、室内外でお経をあげます。これが毎朝の習慣なのです。
その後の朝食は、パン食と米食を代わる代わるですが、みそ汁は欠かさないそうです。ミルクと野菜とは、別に野菜ジュースも飲み、ヨーグルトも食べるそうです。
それから8時ごろ、おはようございますと家族が集まってお茶をいただき、仕事に就きます。
朝の仕事は、手紙や書類の決裁、原稿も書きます。すべて手書きで、パソコンは使わす、携帯も持たないそうです。
書き物をすると認知症の予防になり、頭の働きが活性化されるので、100歳であっても頭脳明晰なのはそのおかげでしょう。無論、お茶を飲む習慣も健康には良いのです。そして、姿勢が良いのは、茶道での鍛錬の成果にあることは明白です。
100歳となっても、元気に世界の平和のために活躍できるのは、日常的な鍛錬や心がけがあってこそなのだと敬服しています。