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人生を変える口ぐせ「運がいい」「ありがとう」

言葉によって、いろいろなことが変わります。

自分の心や相手の心、周りの人の心。

たった一言の言葉であっても、その言葉を何度も繰り返していると口ぐせになります。

口ぐせになった言葉は、その人の心を変えます。

心が変わると、行動が変わり、習慣が変わります。

そして、人生が変わっていきます。

松下幸之助さんの口ぐせ「運がいい」

経営者として没後も多くの人から慕われている松下幸之助さんには、有名な話があります。「自分は運がいい」とよく口にしていたという話です。

松下さんは、幼い頃、父親が破産したので、九歳で故郷和歌山から大阪に丁稚奉公に出なければなりませんでした。

 ろくに学校にも通えず、小学校も四年で中退したので学問もありませんでした。

 また、生来、病気がちで体が弱い人でした。家族のほとんどは結核で亡くなっています。二十歳で結核の初期である肺尖カタルを患ったときには、ついに自分もか、と思ったそうです。

しかし、この「ないない尽くし」の状況の人物が、わずか五十年の間に、たった三人で始めた零細企業を従業員十万人の世界的企業にしました。

 その成功の秘密は、松下氏の考え方にあります。

「松下さんは、なぜ成功できたのですか?」という問いに彼は、「運がよかったから」としばしば答えました。

松下さんにとって、貧しく、学問がなく、体が弱いことは、決して運が悪いということにはならなかったのです。

 幼い頃から貧乏をして辛い思いを経験させてもらったからこそ、人を物心両面から豊かにすることを目指して、おかげさまで成功できた。

 自分には学問がなく何も知らないからこそ、人の話をよく聴いて、みんなの知恵を集めて、おかげさまで成功できた。

自分は体が弱かったからこそ、人に助けてもらいおかげさまで成功できた。

 貧乏も、学歴のなさも、病弱だったことも、自分にふりかかってくるものすべてに対して、「自分は運が強い」「これらはすべてプラスになる」とポジティブに解釈してきたのです。

ちなみに松下幸之助さんは、入社試験で「あなたは運がいいほうですか、よくないほうですか」と尋ねることがあったそうです。

 そして、「はい、運がいいほうです」と答える人を採用したとのこと。

 自分は運がいいと考えている人は、物事や状況のマイナス面ばかりでなく、むしろプラス面を見て考え行動することができます。物事や状況を前向き・肯定的に考え、積極的にどんどん良い仕事をしていきます。

成功は自分の実力というより、運がいいからと謙虚です。何よりも、まわりの人のおかげだという感謝の気持ちも忘れません。

 そんな人なら誰でもいっしょに働きたくなりますよね。

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口にする言葉で人生は変わる

その人がどんな言葉を口ぐせにするかによって人生や人間関係は変わっていくものです。

たとえば、世の中には、「私は不幸だ。運が悪い」と口にする人がいます。

逆に、「私は幸せだ。運がいい」と言う人もいます。

 先のことは分からないとは言え、どちらの人が、これから人生が良くなるかといえば、現在「私は幸せだ」と口にできる人のほうでしょう。

なぜかと言うと、その人はそういうポジティブな言葉を言うことで、まわりの人に喜びを与えているからです。

たとえば、家族の前で「おれは幸せだ。運がいい。いい人生を送ってこられてありがたい」とつぶやいたとします。

その声は妻にも聞こえ、子どもたちにも聞こえるでしょう。

その声を聞いた妻はこう思うのです。

 「ということは、自分と生活してきたこれまでの年月も幸せだったのね」

その結果、妻に喜びが湧きがってきます。

「あなたのおかげでいい人生を過ごせている」と言われたようなものですから、自分や自分の人生も肯定されてように思え、元気になります。

子どもたちもそうでしょう。

「お父さんは僕たちが生まれきてからの人生を良かったと考えている。僕たちは愛されているんだな」と。

そう思った瞬間に、子どもたちも自分が肯定されたように思い元気になります。

友人に対しても同じことが言えます。

「おかげで私は恵まれていて、いい人生を送らせてもらっている」と言ったとします。その友人とのそのつき合いを含めていい人生だと言われたわけです。やはり友人たちも嬉しくなるのです。

このように、まわりの人は元気になり、喜びが生まれてきます。その人のそばにいたいと思うようになります。そして、その人がもっと好きになり、もし何か困っていることがあれば助けてあげたいと思うようにもなります。

逆に、愚痴・悪口・陰口ばかり言う人は、まわりの人を不愉快にします。その結果、人間関係は悪くなるでしょう。

神さまへの感謝を口ぐせにする

さて、神さまはどうでしょう。

神さまは、人間に幸せになってほしいと思い、一人一人にたくさんの恵みをくださっています。

けれども、多くの人は、その恵みに気づかず、有難いとも思いません。むしろ文句を言うのです。自分は人より少ない、自分ばかり損をしている、神は何もしてくれない、などと。

逆に、わずかの恵みであっても、「おかげで自分は幸せです」「神さま、ありがとう」と口に出し、喜んでいる人がいます。このように感謝の心を持っている人は、これから先も、多くの恵みが豊かに与えられます。

神さまや人を喜ばせる言葉、口ぐせには、人生を好転していく力があるのです。

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『カトリック生活』2017年3月号 連載エッセー「いのり・ひかり・みのり」第55回 拙稿「障がい者と共に生きる」より