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感謝は幸せになるための 最高の秘訣 「当たり前の毎日」にありがとう

私たちは子どもの頃から、「人から何かをしてもらったり、何かいいことがあったりしたら、感謝をしなさい」と教えられてきたのではないでしょうか。

それは、それで当然です。

しかし、大人になってよくよく考えてみると、それでは不十分だと気づくでしょう。

それに、実際は、「いいことがあったから感謝するのではなく、感謝するからいいことがある」

というお話をします。

いまという時間は贈り物

蛇口をひねれば水が出る、電気が通っていて夜でも明るい、電車に乗ってどこにでも出かけられる……。地震や台風、豪雨などの災害が起こるたびに、そうした日常が当たり前ではなく、有り難いことだったと実感するのではないでしょうか。

また、病気になったり、けがをしたりすると、体が普通に動く状態がいかに恵まれていたかに気づかされます。

私は以前、ぎっくり腰で一週間ほど寝込んだことがあります。そのときは、食事をするのもトイレに行くのも大変でした。くしゃみをするだけで、腰に激痛が走るのです。そんな経験をすると、腰がいかに自分の日常を支えてくれていたかを実感します。腰だけではなく、心臓や肺、自分の体すべてが、自分を支えてくれていたことに気づかされる。自分がいかに恵まれていたかがわかるのです。

「今日」や「いま」という時間も、私たちは当たり前のように享受しているわけですが、どんなに望んでもこれをつくり出すことはできません。「今日を生きたい」と思いながら、亡くなってしまう人は大勢いるわけです。

そういう貴重な時間を、私たちは毎日無償で与えられているのです。

「いま」という時間は、英語でpresent(プレゼント)と表現されます。まさに私たちに与えられた「贈り物」なんですね。

その有り難さに感謝することができれば、もっと時間を有効に活用しようと思えるのではないでしょうか。

いま、この状況を当たり前と思っていたら、感謝する気にはなれません。

でも、いままで当たり前だと思ってきたものを、有り難いと感謝するようになると、心は変わっていきます。

不満や怒りが消え、私たちの平凡な日常生活の営みは、いかに恵まれているのかに気づきます。自分の命、いまという時間、家族の存在……。自分はなんてすばらしいものを与えられているんだろう、なんて有り難いんだろうと、幸せに思えるようになるのです。

そして、私たち自身は、そういうものを与えてもらえるほど、価値ある存在であることに気づかされるんですね。

よく、自分を否定的に考えて、「自分はだめな人間だ」「つまらない人間だ」と考えてしまう人がいます。体が弱ってしまい、「自分はもうだめだ」と思ってしまう人もいるでしょう。しかし、そういう状態であっても、いろんなものを与えられているすばらしい存在なんですね。

日常生活の一つひとつに感謝していくと、そのことに気づかされる、あるいは気づいていくのです。すると、自分を肯定できるようになり、人生はより恵み豊かなものになっていくのではないでしょうか。

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ピンチのときほど感謝する

私は、感謝には三段階あると考えています。

第一は、人から何かをしてもらって、感謝する。これは誰もが子どもの頃から教えられてきたことです。

第二は、当たり前だと思っていたことに感謝する。これは、学校では教えてもらえないかもしれません。本人もなかなか気づきにくいでしょう。

第三は、ピンチのときも、つらくて苦しいときも感謝する。これは、なかなか難しいことかもしれません。でも、この三段階目が習慣化すると、人生は間違いなく好転していくはずです。

なぜなら、苦しいことやつらいことは、たいてい自分のためになることでもあるからです。その状況を耐え忍べば、自分がさらに一歩成長できると思うんですね。

私が小・中学校の教師をしていたときは、授業中に簡単な問題ばかりやらせていては、生徒の力はつきませんから、頭をうんうんひねるような難しい問題を与えるわけです。それは、まじめに前向きに取り組めばできるようになります。それによって生徒たちは成長するのです。

私たち社会人も同じではないでしょうか。ときに難問が降りかかってくることがありますが、それを通して自分自身が成長していきますし、会社も発展していくと思うんですね。

 視覚と聴覚の障がいをもちながらも、障がい者の教育や福祉の発展に貢献したヘレン・ケラーは、こういっています。

「私は、自分の障がいを神に感謝しています。なぜなら、それを通して私自身を、私の仕事を、そして私の神を見出したのですから」

 ヘレン・ケラーは最初から自分に与えられた試練に感謝していたわけではありません。その意味もわからず、ただただ苦しんだときもありました。しかし、人生に前向きにチャレンジしていくことで、その試練を自分へのプレゼントだと気づき、感謝することができたのです。

感謝は私たちが幸せになるための、最高の秘訣だと私は思います。そして感謝とは、特別なことがなくても、いま、この状況で、できるものなのです。(談/文=佐藤 令)

「ありがとう」を口ぐせに

私は「言葉の力」というものを信じています。言葉は人の心を変え、意識を変えます。さらには運命をも変えることがあると思うのです。

「ありがとう」「感謝します」という言葉は、私たちの心を前向きにする言葉です。「ありがとう」は、日本語の中でいちばん美しい言葉ではないかと私は考えています。この言葉を、何度も繰り返して、それを口癖にしてしまうぐらい、言葉に出して習慣化することが大事です。

これを習慣化すると、しだいに自分の気持ちが変わってきます。人に対する謙虚な気持ちが湧いてくるのです。

相手も「ありがとう」といわれれば幸せな気持ちになりますから、人間関係も変わります。その人が自分を受け入れてくれて、好意をもってくれるため、人間関係はよくなるでしょう。その結果、仕事もうまくいくようになり、運もよくなっていくのです。

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『清流』2020年12月号「第1特集/『当たり前の毎日』にありがとう」より