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自らが学ぶ機会となった初めての講演「心を育てる」

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初めての講演「心を育てる」

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初めて講演をしたのは、2000年12月でした。

はじめは、お断りしたのです。

でも、やってよかった。

そのことを「長崎新聞」のエッセーに書いていましたので、ご紹介します。

   心を育てる

読者の方から、あなたが書く記事のような話を自分が主催する会でしてほしいと頼まれた。

その会は、「誰もがもって生まれた素晴らしい心を磨き出し耕すために、月一回、‥‥宗教の枠にもとわれずに多分野の講師の方のお話を聞く会」である。

今度で七十五回目になるそうだ。

光栄には思ったが、自分はそのような会に招かれるほど偉い者ではない。
それに話も下手だ。即座にお断わりした。

しかし、会長さんの笑顔と熱意に説得された。

テ-マは「心を育てる」。

ただし「子供の心」ではなく、「自分の心」を育てる、という話にしようと思った。

その方が、会の方々には関心がおありだろうと考えたからである。

会は、平日の午後七時から始まる二時間もの集まりである。

しかも、参加費を払わねばならない。

当日は師走の冷風を感じさせる肌寒さで、夕方から雨になった。
足下は暗い。

こういう状況で、自分の「心を磨き出し耕すために」会場まで足を運ぶ人は、一体どんな方々だろうと楽しみだった。

参加された方々は、やはり、良い聞き手だった。

私の話はうまくなかったが、一時間半もの間、話者をしっかり視て聞かれていた。

要所要所でメモを取られた。

悲しい話には泣き、楽しい話には笑われた。

その姿を見て、私の方こそ感動し心洗われる思いがした。

今、教育界では、子供の心を育てることに力を入れて取り組んでいる。

けれど、本当は、教師や親、自分自身の心を磨き育てることこそ、大切ではないかと常々思う。

自分が人に優しくしないで、どうして子供たちに思いやりを持てと言えよう。

自分の弱さと戦わないで、どうして子供たちに強くなれと言えよう。

自分が一所懸命しないことを、どうして子供たちにガンバレと言えよう。
帰りの車の中で、一人になると、自然と我身を顧みずにはいられなかった。

私は子供たちに望むほどに自分の心と向き合ってきたのだろうか。

降りしきる雨の音が、なぜか心地良かった。

話をしに行って、心を磨かれ育てられたのは、私の方であった。

 

今でも思うのは、話をしに行って一番勉強になっているのは、私自身ではないかいうことです。

ですから、お金や時間をかけて遠くから来てくださる方には、なんだか申し訳ない気持ちになりますし、本当に有り難いことだとも思っています。

また、その熱意に心から敬意をもちます。

これからも、何度か講演をします。

参加してくださる人は、一体、どんな方だろう。

その人に自分が何を提供でき、何を学ぶのだろう。

そして、互いの人生にどんな影響があるのだろう。

そんなことを考えながら、とても楽しみに思っています。