知らなかったよ。
こんなにきれいだったなんて、
すぐそばにいて
知らなかったよ。
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星野富弘
詩人・元中学教師
星野さんは、1970年春、群馬大学を卒業後、新任の体育教師として、公立中学校に赴任しました。
しかし、その2ヵ月後、体操部の部活指導中、宙返りの模範演技をしていて頭から床に落ち、首の骨を折る事故にあいます。
一命はとりとめたものの手足はマヒし、頭を動かせるだけの体になりました。
絶望に打ちひしがれながらも、星野さんは絵筆を口にくわえ、水彩で花を描き、詩を書き加える詩画に取り組むようになります。
一時間、筆をくわえれば体は疲れ果て、一枚の絵をかくのに、何日もかかりました。
こうしてできたたくさんの花の詩画は、詩画集となり、いまも多くの人を感動させています。
冒頭の言葉は、その詩画の一枚「ドクダミ」に添えられた言葉です。
星野さんは、以前はこのドクダミという草が嫌いでした。
へんなにおいがするし、どす黒い葉っぱに、ミミズのような赤い茎が、ジメジメした日陰にはえていたからです。
しかし、彼は車椅子の生活をするようになってから、ドクダミの見方が変わります。
自分のまずしい心で、花を見てはいけない・・・と。
そのときから、ドクダミが美しく見えるようになったのだそうです。
「いやだと思っていたものが美しく見えるようになった。・・・それは、心のなかに宝物をもったようなよろこびでありました。ドクダミの花の前で、わたしは、またひとつ、おとなになれたような気がしました」
(星野富弘著『かぎりなくやさしい花々』)