「1%もあるやん。ゼロと1なら、1%に賭けてください」
前向きな言葉が、絶望していた人の運命を変えた、元気がでるお話です。
人は変わることができます。
一つの言葉で、命をつなぎとめ、一つの言葉で、生き方を変えることだってできるのです。
突然白血病の宣告
1986年、大学院生だった大谷貴子さんは突然白血病の宣告を受けました。
骨髄の型が適合し、移植が可能になるのは兄弟で25%、他人では数千分の1。
必死の骨髄提供者探しの末、奇跡的に母親と適合。
しかし、病状はもはやかなり悪化していて7人の医師団のうち1人は、手術が成功する可能性は1%と言い、残る6人の医師は、移植しても助からないと反対しました。
この絶望的な数字に、両親はうつむきました。
そのとき、意識がもうろうとしていた大谷さんに代わって、お姉さんが、医師団に向かって大阪弁でこう言い切ったのです。
「1%もあるやん。ゼロと1なら、1%に賭けてください」
1%の可能性に賭ける
このお姉さん一言が、大谷さんの命をつなぎとめます。
可能性が1%と言われたとき、99%ダメだと考えてあきらめるか、その1%に希望を見出すのか。
考え方一つで、人生は変わっていきます。
大谷さんは、1%の可能性に賭けて生きようとしました。
話は戻るのですが、
大谷さんが骨髄を提供してくれる人を探しているとき、アメリカには、「骨髄バンク」があることを知りました。
大勢のボランティアにドナー登録をしてもらい、骨髄液を無料で斡旋する組織です。
しかし、日本にはありませんでした。
大谷さんはその事実を知り、絶望するのですが、お姉さんは、こう言ったというのです。
「ないんやったらしゃあない、あんたがつくったらええやん」
「そんな見たこともないもんつくるまでに、私の命が間に合うはずないやん!」
と叫び返すと、さらにお姉さんはこう続けました。
「貴子には間に合わんかもしれん。けど、骨髄バンクがあれば将来、誰かが助かるかもしれへん。毎年、6000人もの人が白血病や再生不良性貧血になってるんやろ?そのなかの誰かに間に合えば、あんたが生きた値打ちはある。なら、やるしかないやん。あんたが死んでも、私と母さんがバトンを受け継いであげる」
なんという力強い、温かい、覚悟をもった言葉でしょう。
自分の命の使い方に、希望を見出せる言葉でもあります。
移植手術は成功
1%に賭けた大谷さんの移植手術は、成功しました。
退院すると大谷さんは、「もらった命」で骨髄バンク創設のために、必死で署名運動に取り組みます。
集まった署名の数は120万超。
1989年、日本初の骨髄バンクを名古屋で設立。
その後も精力的に活動を続け、大谷さんは、全国骨髄バンク推進連絡協議会会長として「誰もが移植を受けられる」ために身を挺して活動中です。
1%の可能性に賭けて行動したきた人は、すごい。
どんな状況でも可能性を信じて、障害を乗り越えていきます。
そのきっかけは言葉でした。
「1%もあるやん」
なんて前向きな言葉でしょう。
「ないなら、つくったらええやん」
なんて勇気の湧いてくる言葉でしょう。
人は変わることができます。
一つの言葉で、命をつなぎとめ、一つの言葉で、生き方を変えることだってできるのです。
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【出典】鎌田 實 (著) 『人は一瞬で変われる』