聖路加国際病院副院長 細谷亮太さんの御本を読んでいて、ハッとすることがいくつもありました。
たとえば、次の文章。(子どもたちのために書かれた本の一節です)
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人と人のつながり
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この間、手作りのおにぎりなんか食べられないという子がいるのを知って驚きました。
コンビ二のおにぎりなら清潔で安心だけど、人がにぎったのはきたない、と言うのです。
おにぎりは「おむすび」ともよばれます。
左右の手のひらを祈りをこめて「結ぶ」ことからの名前です。
おにぎりを作る人が食べてくれる人への「今日も元気でいてほしい」とか「無事に旅をしてほしい」という思いがこめられたものです。
おかあさんが朝、きみのためにむすんでくれるおにぎりは、
「今日も一日、元気ですごし、無事に家にもどってきてほしい」
という思いがこめられているのです。
お金では買えない、深い思いがこめられているのです。
▼人は、誰かの幸せを願って働くものです。
自分のために働く人もいれば、人のために働く人もいます。
親が子どものことを思って、今日のおむすびをつくるように、誰かのことを思って、今日の仕事をおこないます。
そういう思いは、目にはみえないけれど、確かに存在します。
▼たとえば、今日、食卓に並んだ食べものにも、そういう誰かの思いがこめられているかもしれません。
たとえば、魚一匹にしても、海でそれを採る人、運ぶ人、売る人、買う人、料理する人、たくさんの人の仕事を通して、私たちの食卓に並ぶのです。
米一粒、野菜一切れも、それを作る人は、何ヶ月もの時間がかけています。
そうして、私たちの目の前においしくいただける形となって運ばれてきます。
そう考えると、目の前の食事がなんと有難いものと思えることでしょう。
▼ですから、ある人は、食前、食後に次のような祈りを唱えます。
「父よ、あなたの慈しみに感謝してこの食事をいただきます。ここに用意された物を祝福し、私達の心と身体を支える糧としてください。」
「父よ、感謝のうちにこの食事を終わります。あなたの慈しみを忘れず、全ての人の幸せを祈りながら。」
自分に与えられたものに感謝し、それを無駄にしないように。
そして、自分もまた人の幸せのために働けるように祈ります。
▼人の思いのこもった食べものや商品を私たちは、いくらかのお金を出せば手に入れることができます。
それも、なんと有難いことでしょう。
おかあさんが、子どもに
「今日も一日、元気ですごし、無事に家にもどってきてほしい」
と祈りながら、おむすびをつくるように、
人は人の幸せを願いながら仕事をすることができます。
私たちが今日、手にするものには、
「今日も一日、元気ですごしてほしい」
「今日も、何か良いことがあるように」
という誰かの願いがこもっているのだと思います。
それを有難いなあと感謝することで、人と人はつながりを深めていけるのではないかと思います。
人と人は思いでつながっています。 (^.^)
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【出典】細谷亮太著『生きようよ 死んじゃいけない人だから』
小児科医として、たくさんの小児がんの子どもを看取ってこられた
細谷亮太先生が若い人向けに、いのちの大切さを謳った一冊です。