いい話

人から愛される徳を積む(本田宗一郎)

人間にとって大事なことは、
学歴とかそんなものではない。
他人から愛され、
協力してもらえるような
徳を積むことではないだろうか。

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本田宗一郎
(1906~91)
本田技研工業創業者

創業以来、本田宗一郎とよきパートナーだった藤沢武夫は、本田とつきあいを始めたころ、本田の人間的な魅力に「電気のようなショック」を受けたことがあるそうです。

つぎのような面白いエピソードがあります。

あるとき、本田は藤沢らと浜松の料亭に外人を招待して酒を飲んで騒いだことがありました。

外人は酔いつぶれて一人で先に寝たまではいいのですが、夜中に胃の中ものを戻してしまいました。それを女中さんが洗面器に受けて、便所へこぼして捨てました。

翌朝、その外人は自分の入れ歯がなくなったと大騒ぎ。
さあ、困りました。
昔の汲み取り式の便所ですから、便壷のなかをさがせば入れ歯はあるはずです。
しかし、場所が場所だけに誰もが顔を見合わせました。

と、そのとき、本田は裸になって便壷のなかにドボンと入り、そうっとなかを手さぐりし、入れ歯を探し出したのです。

しかも本田はその入れ歯をきれいに洗った消毒し、自分の口に当てながら、
「だいじょうぶ。もう臭わないよ」
と言い、再び消毒して外人に渡しました。

外人はもちろんのこと、藤沢などその場に居合わせたものはみな眼をむいて驚いたそうです。

このように本田宗一郎は、人を引き付ける魅力に富んでいました。

人間にとって大事なことは、学歴とかそんなものではない。
 他人から愛され、協力してもらえるような徳を積むことではないだろうか。
そして、そういう人間を育てようとする精神なのではないだろうか」
上之郷利明『本田宗一郎の3分間スピーチ』より