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一人ではチャンピオンになれない。
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ガッツ石松
ガッツ石松さんは、伝説のプロボクサーです。
1974年に世界チャンピオンになってからの5度目の防衛戦のことです。
慢心してしまいました。
暴飲暴食のため、体重がどんどん増えていったのです。
防衛戦3ヶ月前は、なんと体重が19キロもオーバー。
さすがに反省し、過酷な減量を開始するのですが、10日前にまだ10キロもオーバー。
飲まず食わず、ロードワークなどで1日1キロ落としていきました。
ニ、三日前になると階段を上る力もなくなるほど苦しんだそうです。
口が渇き、唾液が飲み込めず苦しむと、付き添いの若者が背中をさすりながら泣いていました。
「彼も俺に夢を託している」と実感し、その後、計量をパス。
右アッパーによる14回KOでベルトを守りました。
彼は言います。
「一人ではチャンピオンになれない。みんなの支えがエネルギーになりました」
彼は、子どもの頃は自分勝手なガキ大将だったそうです。
体の弱い父親は定職がなく、母親が力仕事で家計を支えていました。
兄弟は4人、家は貧しく、いつも腹をすかせていました。
周囲のさげすむ目に怒りをもち、食べるために、他人の畑から野菜を盗みました。(生きるための自己防衛だったのしょう)
転機となったのは、中学2年のときに問題を起こし、家庭裁判所に父親と行った帰り道の出来事です。
生まれて初めて、ラーメン店に入りました。
父と子、二人で一杯だけ頼んだラーメンを、このとき自分一人で食べてしまいます。
すると、父が残りのスープに水を足して飲み干したのです。
あっ!・・・・・
父親の空腹にさえ気づかない無神経さに腹が立ち、泣きたくなりました。
そして、このときに少年は決意をするのです。
「悪さをやめて、両親を貧困から救ってやる」
それがボクシングを志す動機となりました。
ガッツ石松さんがチャンピオンになれたのは、本人ががんばったのは当然ですが、家族の支え、ジムの人たち、みんなの支えがあったからでしょう。
わたしたちも、きっと誰かに支えられています。
夢を追いかけることができるのも、それは誰かが支えていてくれるから。
みんなの支えはわたたしたちのエネルギーになります。
支えられていることに気づけば、力が出てくる。
出典:「日本経済新聞」2006年7月1日 ガッツ石松こと鈴木有二著『神様 ありがとう 俺の人生』 ガッツ石松著『愛と幸せのばかぢから』