「『誰かが笑ってくれていること』。そんな単純なことが、もしかしたら一番大事なのかもしれないと思った。」
葉田 甲太著『僕たちは世界を変えることができない。』より
▼担当編集者さんから、『マザー・テレサ 愛の花束』で紹介している詩「あなたの中の最良のものを」を映画で使わせてほしいという依頼がきているのですが、・・・
というメールをもらったのが、2010年の秋でした。
主演の向井理さんが朗読するとことでした。
もともとあの詩は、私もドン・ボスコ社さんから引用させていただいているものなので、私が断る理由などありえません。
即、OKをしました。
その後、そのまま忘れていたのですが、街で映画のチラシを見て思い出しました。
人気絶頂の俳優、向井理さんの初主演作品。
2011年9月23日に封切られた『僕たちは世界を変えることができない』という映画です。
「カンボジアに小学校を建てよう!」
▼この映画は、「カンボジアに小学校を建てよう!」と奮闘した医大生の同名のノンフィクション本が原作となっています。
読んでみると、とても面白い本でした。
内容は、次のとおりです。
カンボジアに学校を!
向井理主演で2011年秋に公開される同名映画の原作ノンフィクション。
医大生の甲太は受験勉強をして大学に入ったものの平凡な日常に疑問を抱いて
いた。そんな彼が、<150万円を寄付すればカンボジアに小学校が建つ>とい
うパンフレットを偶然見かける。
「これだ!」と感じた甲太は、仲間を募り、クラブでのイベントを企画して、
何とか150万円の捻出をはかろうとする。
それと同時にカンボジアにも出かけ、売春宿で働く少女たちやエイズの問題、
地雷除去やゴミ山で暮らす人たち……などの過酷な現実に触れ、自分たちとの
ダメさ加減と正対することになる。
けっしてきれいごとだけを書いているわけではない彼らの行動は読む者に勇気
と元気を与えるものとなっている。
笑って泣けて考えさせられる青春ストーリー。
TV「王様のブランチ」でも取り上げられ、“いま、自分に何かできることは?”
と多くの人の共感を呼び、話題沸騰のノンフィクションを文庫化。
自分の殻を打ち破る勇気と善意をもって
▼都会の普通の大学生が、
「何か、毎日ドキドキしていたい。何か、人とは違うおもしろいことをしてみたい。何か、この世界にやらかしてみたい」
そんな動機で「カンボジアに小学校を建てよう!」と思いつき、どうしたらいいのか、自分たちで知恵を出し合って考えて、いろいろあったけれど・・・やり抜いたのです。
彼らは自分たちがすごいなんて思っておらず、特別だとも思っていません。
でも自分の殻を打ち破る勇気と善意をもって動き、成し遂げたのです。
その過程で、大事なことを学んでいく、さわやかな感動の青春物語。
いまどきの大学生が、自分の弱いところもさらけ出し、飾らないで淡々と事実を自分の思いを綴る文章に好感がもてる本でした。
(ただし後書きには「下ネタが多くてごめんなさい」と著者の弁)
誰かのために何かをする喜び
▼ナンパをしたり、イベントをしたり、ケンカをしたり、ゲリをしたり、奮闘努力の末に、やっとのことで彼らは小学校開校式を迎えるのですが、そのときの著者の文章をご紹介しましょう。
「だけど、カンボジアの小学校開校式で、たくさんの子供たちが笑ってくれた。
その笑顔を見たら、今までのことなんてどうでもよくなった。
死んでもいいと思った。嘘じゃない。・・・・
『誰かのため』なんて、普段は少し恥ずかしくて言えない。
だけど、あのときは信じてもよかった。
『誰かのために何かをする喜び』は、ときとして『自分のために何かをする喜び』をすっごく上回るってことを。
『誰かが笑ってくれていること』。そんな単純なことが、もしかしたら一番大事なのかもしれないと思った。」(単行本、P173 )
▼著者の葉田甲太さんは、2011年春から医者として勤務されているはず。
念願の小児科医にすすめたのでしょうか。
であっても、なくても、きっと誰かを笑顔にしてくれていることでしょう。
私たちも世界を変えることはできないかもしれないけれど、自分を変えることはできます。
そして、周りの人のことを考えて何かをすれば、その人を笑顔にすることもできるのです。
誰かのために何かをする喜びを味わいたいですね。(^.^)
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【出典】葉田 甲太著『僕たちは世界を変えることができない。』(文庫本)
(本の印税はカンボジアの小学校へ寄付)
映画では、マザー・テレサの詩「あなたの中の最良のものを」を向井理さんが朗読。