言葉が前向き・肯定な人は、高齢になってもお元気です。
聖路加国際病院名誉院長の日野原重明氏は105歳になるまで、様々な要職に就きながら、執筆や講演もし、現役の医師として働いておられました。
私は103歳のときに講演をお聞きしたことがありますが、驚くほどお元気でした。
その講演についてです。
日野原重明氏の講演から
2015年4月の第29回日本医学会総会の記念講演。テーマは、「日本における高齢化と真の健康社会」。
椅子が用意されていたにもかかわらず、立ったままで、パワーポイントを使いながら、30分強にわたる講演を続けられました。
日野原氏は、超高齢社会における「老い」の在り方、生きがいを持って生きる大切さを説かれました。
特に「老化」と「老い」の違い。「老化」は生物的な概念であり、「老い」は人間的な概念であるとし、「老いとは、老化の中に人間の生命の意味を探ること。これからの社会は、老いに注目することが求められる」と述べ、「生きがいのある人生」を送る大切さを強調されていました。
「今までやったことがないことを始めることは、私にとって非常に大切なこと」と語る日野原氏が始めたことの一つに、「新老人の会」があります。
2000年、88歳の時に発足した会で、自身が会長を務めました。会員数は約1万1200人。75歳を後期高齢者と呼ばず、「シニア会員」と言い、60歳から74歳までの会員は「ジュニア会員」とユーモラスに紹介されました。
講演の締めくくりの言葉も、日野原節でした。
「私の元気の源は、若い人とともに、前進したいという思い。前進、前進、前進また前進!」
103歳とは思えない、張りのある声で「前進」という言葉を繰り返し、講演を終えたのです。数多く集まった医師、医療者、一般市民の満場の笑顔と拍手につつまれ舞台を後にされました。
「前進、前進、前進」
いま思うに「前進、前進、前進」という言葉は、日野原氏の願いであり、口ぐせでした。
自宅で闘病生活をする中、NHKニュース「おはようにっぽん」の「けさのクローズアップ」に105歳でビデオ出演されたときの「最後のインタビュー映像」でも、こう語っておられます。
「前進、また前進を私たちは続けなくちゃならない。キープ・オン・ゴーイング!(前に進み続けよう!)」
死を意識しながら、日野原氏が私たちに伝えておきたかった言葉です。
年齢を重ねれば、誰でも生物学的な概念である「老化」はあるでしょう。
けれども、人間的な概念である「老い」は、心の持ち方、行動によって変わってきます。
日野原氏のように、新しいことを始めたり、生きがいをもって取り組むことによって、これからも素晴らしい充実した人生を歩むことができます。
私たちできること、可能性はたくさんあります。
「これからも前進、前進、前進、また前進です!」