2008年から10年間、旧ブログ「子どもの本・絵本を読もう!」に、ほぼ毎週、おすすめの絵本や本をご紹介していました。(430冊くらい)
私が読んで良かった本、子どもだけでなく、大人にも読んでほしい本ばかりです。
本ブログに、それらの本の記事を引っ越しさせ、ピックアップして少しずつご紹介していきます。
『幸せな王子』オスカー・ワイルド
この話は子どもの頃に読んで、いまでも忘れられません。
ご存じだとは思いますが、ストーリーをご紹介します。
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ある街の柱の上に幸福な王子の像が立っていました。
とても美しい王子は街の人々の自慢でした。
南の国へ向かう途中、旅に疲れたツバメが、
王子の足元で寝ようとすると、突然上から雨水が落ちてきました。
それは、王子の涙でした。
王子はこの場所から見える不幸な人々に
自分の宝石をあげてきて欲しいとツバメに泣きながら頼むのです。
ツバメは言われた通り、病気の子供がいる貧しい母親や
飢えた若い画家と幼いマッチ売りの少女に
王子の目のサファイアなど持っていきます。
「ぼくは、目が見えなくなった。
君は街を飛んで、色々な話を聞かせてくれないかい」
まだまだたくさんの不幸な人々がいるのを知ると、
自分の体の金箔を剥がし分け与えてほしいと頼みます。
やがて冬が訪れ、雪が降りはじめました。
王子はみすぼらしい姿になり、ツバメも弱っていきました。
「今まで、本当にありがとう。
でも、ごめんね。
君は楽しみしていた南の国に、とうとう行けなくなったんだね」
「いいんです。ぼくは、あなたが本当に好きでしたから」
ツバメは最後の力を振り絞って飛び上がり、
王子にキスをして足元で力尽きます。
その瞬間、王子の鉛の心臓は
音を立て二つに割れてしまうのです。
「あんな汚いものを除けてしまえ」
偉い人の命令で、
溶鉱炉の入れて溶けなかった王子の心臓とつばめの亡骸は
ゴミとして捨てられました。
それをご覧になっていた神様は、天使たちに命じました。
「あの町でもっとも尊いものを2つ持ってきなさい」
天使たちはごみ捨て場から「鉛の心臓」と
「つばめの亡骸」を持ち、天に向かいました。
『こども哲学-こどもの気持ちって何?』(朝日出版社 1~7巻)
「自分って、なに?」
「良いこと、悪いことって、なに?」
「いっしょに生きるって、なに?」
自分について、人生について、世界について、
あたまいっぱいの疑問と向き合うことになった子どもたちが、
はじめの一歩をふみだすための羅針盤です。
どこかで聞いたことのある答えでお茶をにごすのではなく、
こどもと本気で語りあい、いっしょに考えてみたい。
そう願うすべてのおとなたちにも、
ぜひ手にとってほしいシリーズです。
絵本になっているので、とても読みやすい。
付録としてついている監修者の重松清さんの小話も心に染みますよ。
『少女パレアナ』エレナ・ポーター
孤児となったパレアナは気難しい叔母さんに引き取られました。
でも、かつてお父さんから教えてもらった
どんな事からでも喜ぶことを捜し出す「何でも喜ぶ」遊びで、
その頑な心を溶かしていきます。
やがてその遊びは、町全体に広がっていくのです。
読み終わった後、自分も日常生活に喜びを見つけて
明るく前向きに生きていこうと思える物語です。
『花さき山』斎藤隆介
山の奥に迷い込んだ少女あやは、
見たこともない美しい一面の花々が咲く場所で、
一人の山ンばに出会います。
山ンばは、不思議にもあやの名前も、
あやがおこなったことも知っているのでした。
そして、この花咲き山の秘密について語ります。
「ここの花は、ふもとの村の人間が
やさしいことを一つすると一つ咲く。
あや、お前の足元に咲いている赤い花、
それはお前がきんの咲かせた花だ」
花咲き山は、目に見えないけれど、きっとどこかにあります。
それは、人の心の中にあるのかもしれません。
『でんでんむしのかなしみ』新美南吉
美智子皇后様が、子どもの頃に繰り返し読まれた童話の一文です。
一匹のでんでんむしは、ある日、
自分の背中に、悲しみがいっぱいつまっているのに気づきます。
でんでんむしは、その悲しみに押しつぶされそうになり、
友達のところへ助けを求めに行きます。
しかし、友達は言うのです。
「あなたばかりではありません。
わたしの背中にも悲しみはいっぱいです」と・・・。
つぎつぎと尋ねる友達たちも皆、同じことを言うばかり。
とうとう、でんでんむしは気づきます。
悲しみは誰もがもっている。
そして、自分も
悲しみを乗り越えて生きていかねばならないのだと・・・。
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『銀河鉄道の夜』宮沢賢治
父親の消息がわからず、病気の母親を持ち、
苦しい家計を支えるために姉とふたりで働くジョバンニ。
彼は毎日活版所で活字を拾い、お金を稼ぐ生活をしていました。
父親がいないために他の子供たちにいじめられる中、
幼いときから友達だったカムパネルラだけはジョバンニに優しくしました。
祭りの夜、ジョバンニは一人寂しく涙を流していると
天空の星がぼやけていき、
気がつくと親友のカンパネルラと銀河鉄道に乗っていました。
幻想的な銀河鉄道を巡る旅をつづけながら、
ジョバンニは生あるものの美しさや悲しさを知っていきます。
そして、人間の本当の幸福に向かって進むことを誓うのです。
(名場面)
ジョバンニは、ああ、と深く息をしました。
「カムパネラ、また僕たち二人きりになったねえ、
どこまでもどこまでも一緒に行こう。
僕はもうあのさそりのように、
ほんとうにみんなの幸いのためならば
僕のからだなんか百ぺん焼いてもかまわない。」
「うん、僕だってそうだ。」
カムパネラの眼にはきれいな涙がうかんでいました。
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『スーホの白い馬』―モンゴル民話
大塚 勇三 (著), 赤羽 末吉 (画)
モンゴルの楽器「馬頭琴」の由来をもとにした、悲しく美しい物語です。
スーホは、昔、モンゴルに住んでいた羊飼いの少年の名前。
貧しいけれど、よく働き、美しい声をした少年でした。
そのスーホがある日つれて帰ってきた白い子馬は、
だんだんと大きくなり、スーホととても仲良くなりました。
スーホは白い馬のために、
白い馬はスーホのために一生懸命でした。
ところが、王様の競馬大会に
出場したことで、ふたりは思わぬ悲劇に襲われます。
叙情あふれる淡い水彩画で、
大平原を舞台に雄大に描ききったこの絵本は、
時代を超えて読者の心に響く名作です。
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『兎の眼』灰谷健次郎
ゴミ焼却場のある町の小学校を舞台に、
大学を卒業したばかりの若い女性教師が直面する出来事や出逢いを通して、
児童たちと共に成長する姿を描いた感動的な作品です。
新任教師・小谷芙美先生が受け持った一年生には、
石のように押し黙ってしゃべらない「処理所の子」鉄三がいました。
どれだけ頑張っても、決して心を開かない鉄三に
小谷先生は日々打ちのめされます。
それでも、周囲のふれ合いの中で学びながら、
小谷先生は苦しみながらも鉄三と向き合っていくのです。
そして、小谷先生は次第に、
鉄三の中に隠された豊かさに気付いてきます。
それが誰の目に明らかになってきたのは、
事件が起こります。
鉄三が興味をもってやってきたハエ集めが、
なんと町の人々を救うきっかけになったのです。
人間の可能性とは何か?
真の教育とは何か?
学校と家庭の荒廃が叫ばれるなか、
今も私たちに問いかける作品です。
『バッテリー』あさのあつこ
「本気になれよ。関係ないこと全部すてて、おれの球だけを見ろよ。」
孤高の天才ピッチャー・原田巧と彼の才能を受け止めるキャッチャー・永倉豪を中心に、その友人、家族の関係にもスポットが当てられた物語です。
といってもいわゆるスポーツ根性物ではありません。
友情や努力だけでなく、
中学生という年代に特有な複雑な心情や人間関係が
丁寧に表現され感動を与えます。
中学生だけでなく幅広い層に、その人気は広がり、
文庫化、コミック化、映画化もされています。
スポーツ青春小説の傑作です。
詳細を見る『木を植えた男』ジャン・ジオノ作 フレデリック・バック絵
フランスの山岳地帯にただ一人とどまり、
何十年もの間黙々と木を植え続け、森を蘇らせた男。
エルゼアール・ブフィエの半生を感動的に綴る物語絵本。
名誉や報酬を求めず、森を蘇らせることを願って、
一本一本の木を植える不屈の精神。
その小さな積み重ねが、
とてつもなく大きな力を生み出すことに感動します。
同名の短編映画は’87アカデミー賞短編映画賞受賞。
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