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音楽は幸せと元気をもたらす贈り物

私は音楽に馴染みが薄いほうです。

特定の楽器を弾けるわけではなく、歌も上手には歌えません。

小学校教師になっても、教科として音楽を教えたことはありません。

でも、音楽を聴くのは好きです。

様々な音楽に、心が癒され、元気や勇気をもらってきました。

今日は、音楽についての以前書いた記事をご紹介します。

音楽で元気になれる

好きな音楽を聴くだけで楽しくなったり、ストレスや病気の苦痛を軽減できたりするものです。

 そういうことを実感できる経験が週に一回通っている放課後等デイサービス(障害児の学童保育)でもありました。

 障害をもった子の中には、気持ちが塞いでぐったりすることの多い子がいます。いろいろ言葉をかけても、そばに寄り添っても、なかなか元気になれないとき、本当に自分の無力さを痛感します。

 そういうときの解決策の一つは、音楽だと学びました。

ある子は、アイドルグループ嵐のファンです。嵐の歌が流れる動画をテレビ画面で見せると、だんだん表情や体の動きに生気が戻ってくるのです。

ドラえもんが好きな子は、ドラえもんの歌を聴くと、笑顔になります。

米津玄師が作詞・作曲したNHK二〇二〇応援ソング「パプリカ」を視聴して、五人の子どもユニットFoorinのように楽しそうに踊りだす子もいます。

 もちろん、これは嵐やドラえもんFoorinなどの存在があってのことで、ただ単に音楽だけの力だけないでしょう。

しかし、音楽療法とまではいかなくとも、音楽や歌を通して確かに人は元気になれるのです。

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「くちびるに歌を持て」

 ふと思い出すのが、「くちびるに歌を持て」という実話をもとにした物語です。山本有三編著『心に太陽を持て』(新潮社)に収録されている小話の一つです。要約してお伝えしましょう。

 イギリスの北部の海で、深い霧のために、一そうの船が大型船と衝突し沈没しました。

まっ暗な嵐の夜の海の中に、多くの乗客や船員が投げ出されてしまいます。

 救助は難航しました。冷たい海でただひとり暗い波の間に浮かんでいた男がいました。

 しかし、いくら待っても救助は来ません。このままでは、こごえ死んでしまうと思った男は、一心に祈りをささげていました。

 すると遠くから、突然、美しい歌が聞こえてきたのです。その天使のような歌声に元気づけられ、男はその歌声の方へ霧の中を泳いでいきました。すると、何人かの婦人が大きな材木につかまっているのを見つけます。

 歌っていたのは その中のひとりのお嬢さんでした。元気を取り戻せたことに、男はお礼を言います。

 しかし、しばらくすると、まわりの婦人たちは、救助が来ないことに、不平不満をもらし始めました。

 男はそれらの言葉に同調します。ところが、お嬢さんはその会話には耳を貸さないで、また歌を歌い始めます。つられて男も他の婦人たちも、みんなが知っている童謡や民謡を歌いはじめました。

 何曲も何曲も歌っていると、やがて遠くから救助のボートがやってきました。それを見て愚痴を言っていた婦人は、声をたてて泣き出しました。

 全員が救助されたとき、みんな死人のようにぐったりしていましたが、男はお嬢さんの前に行って丁寧に言いました。

 「お嬢さん、あなたの歌が、わたしたちを救ってくださったのです。本当にありがとうございます」

 果たして、このお嬢さんは何をしたのでしょうか。この悲惨な状況にあっても一言も愚痴をこぼさず、ただ歌い続けていただけです。しかし、そのおかげで、皆に元気や勇気がわきあがり、皆の命は救われたのです。

音楽は愛の伝達手段

 歌や音楽は、人の心に様々なものをもたらします。

 先日、知人に誘われて西宮市のカトリック夙川教会で毎月第三金曜日午後一時から行わている「Music Garden マンスリーコンサート」に参加しました。

内容は、(1)ミニコンサート(ヴァイオリンとピアノのクラッシック曲の合奏)(2)ヴォイストレーング(3)童謡の歌唱でした。

 私にとって非常に興味深かったのは、生後八か月の男の子の反応でした。(1)の間、クラッシック曲の生演奏をお母さんの膝の上で穏やかに聞き入っていたのです。泣くことも暴れることもしないで静かに音の調べに聴き入っているようでした。

 この年代の男の子がクラッシック曲を機嫌よく楽しめるなんて、私には意外でした。

 後で、この子のお母さんにお話を聞いて分かりました。実は、この子のお母さんもプロのヴァイオリン奏者だったのです。

ですから、この子はお母さんのお腹のなかにいたときからヴァイオリン演奏に親しんできたのですね。お母さんの膝の上で生の演奏を聴くのは、至福のときだったのかもしれません。最後にお母さんに抱かれて子守唄を歌ってもらったときも、とても幸せそうでした。

 初めて参加したこのお母さんは言われました。

母親の歌声を聞かせることも大切だとわかりました。これからは歌ってあげたいと思います」

彼女の横には、そのお母さんが孫を抱いていらしゃいました。親子三代で音楽に親しむ様子はとても微笑ましいものでした。

 音楽は聴くも良し、歌うも良し、演奏するも良しです。心身の元気や健康に役立つ神さまからの贈り物です。

そして、愛の伝達手段にもなりえます。神さまがくださったものを、人は人に愛をこめて贈ることで、互いに幸せになれるのです。

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『カトリック生活』2020年5号 連載エッセー「いのり・ひかり・みのり」第102回 拙稿「音楽は贈り物」より

心に太陽を持て。くちびるに歌を持て。「心に太陽を持て。」という素晴らしい詩があります。 1989年に、児童文学者の山本有三さんが紹介した詩(ドイツの詩人・ツェーザル・フラ...