以前、学習塾で個別に小学4年生の子に国語を教えていました。
軽度の発達障害をもった子でした。
小3まで通っていた学童保育では、「人間じゃない」と罵倒されたこともあると、お母さんが言われていました。
この子の自己肯定感を育てるために「宝物ファイル」を作ってもらい、賞状や思い出の写真の他に、1枚の紙を入れて、毎週お母さんから「〇〇くんの良いところ」を一言書いてもらっていました。
私も毎週、A4一枚に紙に、少し長い文章を書いて入れてあげていました。
数年後にでも、気が向いたときに読んでくれればいいなと思ってのことです。
これからご紹介するものは、その手紙です。
振り返ってみると、〇〇くんに限らず、他の子にも言えるようなことばかり書いていました。
そこで、ご家庭や他の教育機関で、子どもを指導するときに、ご参考になればと思い、ご紹介していきます。
20枚ありますので、5つずつに分けます。
君の良いところ16 ~ていねいに書けるようになったこと~
〇〇くんの良いところは、テストのとき、前よりもていねいに字を書けるようになったことです。
ていねいに書くとは、集中して心をこめて書くということです。
ていねいに書くメリット(良い点)はいくつもあります。
1.だんだんきれいに書けるようになっていきます。
逆に、雑に書くと、きたなくなっていきます。
2.漢字をていねいに書くと、正しく覚えることができるようになります。
逆に、雑に書くと、何度練習しても正しく書くことができなくなります。
3.数字をていねいに書くと、、計算の間違い(ミス)がすくなくなります。
逆に、雑に書くと、かんたんな計算の間違いをふえます。
4.テストの答えをていねいに書くと、、書き間違いがへってきます。
逆に、雑に書くと、書き間違いが多くなります。
自分では正しく書いたつもりでも、✗になることがあります。
5.人に提出するもの、見てもらうものをていねいに書くと、その人に喜ばれます。
逆に、雑に書くと、その人が読めないことがあり、間違って伝わります。
作文などでは、あまり良い評価はもらえないでしょう。
一言でいうと、ていねいに書くと、どんどん賢くなっていきます。
逆に、雑に書くと、そのときは楽ですが、だんだん勉強ができなくなっていきます。
〇〇くんは、テストのとき、前よりていねいに書けるようになってきました。
これを続けていくと、どんどん賢くなっていきます。
2020年10月3日
君の良いところ17 ~漢字テストの対策ができたこと~
〇〇くんの良いところは、漢字テストの対策ができたことです。
漢字テストの対策とは、テストに出題される漢字を書けるようにして、テストにのぞむことです。
漢字は、一回練習して、覚えられるようになるものではありません。
読むほうは、一回で読めるようになります。
でも、書くほうは、何度も、何度も練習が必要です。
初めて見た漢字を一度見て、書けるようになるような天才はまずいません。
初めて見た漢字を一回練習して書けるようになる人も、まずいないでしょう。
普通は、小学一年のときにしたように、一つの漢字を五回も、十回も練習して覚えます。
書けるようになっても、次の日には、多くの場合、忘れてしまいます。
それが普通の人間です。誰でもそうです。
だから、また思い出すために、書けるようになるために、また練習します。
漢字テストは、練習した漢字をどれだけ覚えているか、書けるのか、自分でもわかるためにやります。
間違っていたり、書けなかったりすれば、ただ練習が足りないのです。
練習すれば、だれでもできるようになります。
頭のいい、悪いは、あまり関係ありません。
頭のいい子も、練習しなければ、書けなくなります。
そして、悪い点を取ります。
それが続くと、前の学年に習った漢字も書けなくなり、漢字が苦手になっていきます。
〇〇くんは、漢字テストの対策の仕方がわかってきました。
続けていくと、漢字にだんだん強くなっていけます。
2020年10月10日
君の良いところ18 ~食事とかたづけ~
〇〇くんの良いところは、好きな食べ物がきれいに食べられ、あとかたづけもできるということです。
食事は、とても大事です。
ごはんをちゃんと食べられるのは、良いことです。
きれいにぜんぶ食べるといいことがあります。
1.体の活動に必要なエネルギーを補給できる。
2.体や脳が健康に育つ。
3.作った人(お母さん)が喜ぶ。
体に必要な栄養は、いろいろあります。
これらをバランスよく取るとさらに良いですね。
これからも、どんどん食べて元気にすごしてほしいものです。
2020年10月17日
君の良いところ19 ~3回連続90点が取れたこと~
〇〇くんの良いところは、学校の漢字テストで、先週3回連続で90点が取れたことです。
これからさらに続くかもしれません。
90点は大したものです。漢字テスト対策がしっかりできたということです。
塾で練習したときには、書けない漢字や間違った漢字が半分くらいはありました。
それを、ほぼ克服したということです。
では、これからも、この勉強のコツを忘れないように書いておきます。
ステップ1 出題される漢字10個を全部、1つ1つ指で書けるようにする。
(漢字は分解して覚える。書き順通りにする)
ステップ2 1つ1つ見ないで、紙に正確に書けるようにする。
(間違えた漢字の間違えたところに赤で印をつけておく)
ステップ3 テスト前にもう一度、ステップ2で赤で印をつけたものだけでも、
再び練習する。
(指で書くか、時間がなければ見るだけでもOK)
この前、ステップ1と2を、先生が手伝いました。
これからは自分でやってみましょう。
もし90点取れなければ、
試験の前の日に、お母さんに頼んで手伝ってもらうと良いと思います。
しかし、ゆくゆくは、自分ひとりで、できるようになれば、最高です。
難しい漢字が出てきても、一所懸命練習すれば、かならず書けるようになります。
忘れたらまた練習します。すると、また書けるようになります。
何度も繰り返していると、だんだんかんたんに書けるようになっていきます。
2020年10月24日
君の良いところ20 ~多くの時間と愛情をもらえたこと~
〇〇くんの良いところは、お母さんからたくさんの時間と愛情をもらえたことです。
時間について考えてみましょう。
10歳までの平均的な子どもの場合
0歳から3歳まで(赤ちゃん)が、親とどれくらいの時間接するか?
1日約24時間×365日×3年間=約26280時間
3歳から6歳まで(幼児)が、親とどれくらいの時間接するか?
1日約8時間×365日×3年間=約8760時間
6歳から10歳まで(小学生)が、親とどれくらいの時間接するか?
1日約 5時間×365日×4年間=約7300時間
0歳から10歳までの合計 約42340時間
ちなみに、中井先生は、これまで〇〇くんとどれくらいの時間接したか?
1回のクラスで約1.3時間(80分)×月に4回×6ヶ月=わずか31時間
なので、お母さんは、先生の1365倍以上の時間となります。
このすごく多くの時間に親は、どれほど多くのことを自分にしてくれたのか?
しかも、まったく無償で(お金ももらわずに)何をしてくれたか?
ときどき、じっくり、考えてみると良いと思います。
実は、世の中には不幸にも、ほとんど何もしてもらえなかった子もいます。
生まれてすぐにお母さんが死んでしまった子、自分には育てられないと捨てられた子、お母さんがどこかに逃げて帰ってこなくなったかわいそうな小学生も、先生が学校で教えているときに何人かいました。
幸い、〇〇くんは、これまでお母さんから非常にたくさんの時間と愛情をもらえました。
そのおかげで、〇〇くんは健やかに成長してきたし、これからも成長していけます。
2020年10月24日
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この日が最後の授業になりました。
そこで、お母さんに次のような最後の助言を差し上げました。
〇〇くんの良いところを伸ばすために
1.しばらく漢字テスト対策をいっしょにやってあげる。
漢字練習とテストは、〇〇くんが伸びるためのキモです。
漢字は勉強すれば、確実にできるようになります。
漢字のテスト対策ができれば、自信もつき、自分で勉強するきっかけにもなります。
例えば、テストの日は、月、水、金曜日と決まっているので、
(1)その前日(夕食前に)10問ずつ。
(2)毎日(夕食前に)5問ずつ。
などと決めて、定期的にテストをする。
書けるようになったら、二人でいっしょに夕食を食べることにすればよろしいかもしれません。
2.返ってきたすべてのテストをファイルしておく。(学年終了まで)
学校のテストは、自分の勉強したきた資料、成長の記録になります。
テストでは、どこを間違えたか、なぜ間違えたのか、が大事です。
それがわかれば、だんだん次に同じ間違いをしないようになっていきます。
テストを残しておき、たまに見直せば、学校で学ん大量な勉強や大事な気づきを
短時間で復習することができます。
2.宝物ファイルは残しておく。
これからも、〇〇くんの宝物になりそうなものを入れていってください。
一般的に、、日本の子どもは学年が上がるにつれて、「自分はダメだ」「自分には無
理だ」と自己肯定感が低くなってくる傾向があります。
過去の「自分もできた」「自分もやれた」という記録を残しておくと、自己肯定感
は下がらなくなり、うまくいけば上がっていきます。
「自分もできる」「自分もやれる」という自信につながります。
〇〇くんがこれからも健やかに成長されることを祈っています。
2020年10月24日