▼絵本『なにか、わたしにできることは?』をご紹介します。
この本は、私が務めていた学校の卒業生、寺田真理子さんが翻訳したものです。
毎日、朝食をとりながら、
おじさんは新聞を読む。
一字一句、たんねんに。
そこには、
全身がふるえあがるような記事も、
たくさんある。
おじさんは不安でたまらない。
朝食を終えて、シャワーを浴びているときも・・・
一つの言葉が頭の中をぐるぐるまわりだす。
『なにか、わたしにできることは?』
すると、おじさんの中で何かが変わっていきます。
行動が変わっていきます。
彼の不安は消え、温かなものが生まれてくるのです。
▼寺田さんは、2008年の東京国際ブックフェアのスペインの出版社のブースでこの本を見つけました。
広い会場に何千冊もの本が出品されているはずのこの一冊の本が、彼女の心を揺り動かしました。
「ぜひこの絵本を日本で紹介したい!」
その場で、出版社と交渉し翻訳の許可を願いました。
それから日本で版元を探し、いろいろと苦難の連続の末、3年かかってようやく日本語版が誕生したのです。
▼寺田さんは言います。
「この絵本は、他者に関心を向けてその人のために何かをすることで自分が救われていくこと。重い状況を抜け出すきっかけが、小さなところにもあることを伝えてくれると思うのです」
寺田さんが誰よりも強くそう思うのは、ご自身が、以前うつを患い、日々不安を抱え、他者との関わりを避けながら、死ぬことばかり考えていた時期があったからでしょう。
しかし、いまでは見事に立ち直りました。
現在は、読書によってうつから立ち直った経験から、「日本読書療法学会」を創設したり、自分の経験したうつと認知症の症状が似ていることから、認知症のケアのための本を翻訳・執筆したり、講演をしたりして活躍中です。
彼女の場合、その支えとなり力となってきたのは、本(読書)です。
そして、本のなかの言葉でした。
▼この本にキーワードは、「なにか、わたしにできることは?」。
「なにか、わたしにできることはないか?」
そう自らに問うことで人は変わるのだと、この絵本は教えてくれます。
そういえば、カーネル・サンダースさんは、65歳のとき経営していたガソリンスタンド兼レストランが閉店して、落胆していましたが、
「なにか、わたしにできることはないか?」
と自らに問うことで、ケンタッキー・フライド・チキンの事業を始めました。
参照:★65歳で夢にチャレンジ(カーネル・サンダース)https://lucky.t-nakai.work/2019/01/31/story-21/
▼私たちも「なにか、わたしにできることはないか?」と問う。
そして、いまの自分にできることをしていく、と良いでしょう。
ごくささやかな小さなことでいいのです。
そのささやかなことで、他者との温かな関わりがもてるでしょう。
まわりの人や社会にために役立つことができるでしょう。
自分が人から喜ばれる存在であることを改めて知ることができるでしょう。
「なにか、わたしにできることはないか?」と問いながら行動すると、自分も他者との関係も変わっていきます。 (^.^)
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【出典】『なにか、わたしにできることは?』
ホセ カンパナーリ (著) ヘスース シスネロス(画)寺田 真理子(訳)
【関連して】寺田真理子著『うつの世界にさよならする100冊の本』