「このところずっと、私は生き方を学んでいるつもりだったが、最初からずっと、死に方を学んでいたのだ」
レオナルド・ダ・ビンチ
死を意識すると生き方が変わる
▼たまに私は死について考えることがあります。
死は、誰にでもやってくる人生のゴールです。
人の死を思うと悲しい気持ちになります。
が、自分の人生のゴールとてして見据えた上で、いまの自分の生き方を考えたり修正していくのは、意義があることだと考えています。
▼死を意識すると、人の生き方は変わります。
人生において何が本当に大切なのかを真剣に考え、残りの人生(時間)をより良いものにしたいという強い望みが湧き上がってきます。
それは自分の死を間近に迫ったゴールとして、受け入れている方ならなおさらでしょう。
『死にゆく者からの言葉』から
▼だいぶ前に読んだ本ですが、鈴木秀子著『死にゆく者からの言葉』という本をご紹介します。
著者の鈴木秀子さんは、聖心女子大学の教授でシスターですが、若いときに階段から落ちるという事故にあって臨死体験をしました。
その後回復してから、亡くなる直前の人のそばにいて話を聴いてあげるという仕事を長くしてきました。
そうして、鈴木さんは多くの死にゆく人たちとその家族から次のようなさまざまなことを学びます。
・ほとんどの人が自分に死が近づいていることを知っていること。
・その人たちは、死を前にして話したいことをいっぱい抱えていること。
・彼らの心を占めるのは、家族へのいたわりであること。
・自分にとって家族がいかに大切であったかと改めて感じていること。
・家族にどれだけ感謝しているか、を伝えたいと思っていること。
・不和であった人に対しては、謝り、仲直りをしたいと思っていること。
▼ご著書から少し引用します。
「死に向かうという、それまでに体験したことのない状況の中で、病人は死に対する恐れや不安、そして今終わろうとしている自分の人生に対してさまざまな想いが胸をよぎります。
中でも多くの人が、自分にとって家族がいかに大切であったかを思い、辛く淋しい別れを味わっているのです。
もちろん家族に感謝したい気持ちもあれば、自分が亡き後、家族が幸せに暮らしてほしいという望みもあるでしょう。
病人はこうした思いや希望をざっくばらんに話して、あるがままに理解してもらいたいのです。
生き抜けなっかった自分の人生や、切り捨てた部分への悔いや望みも話してみたいのです。
とくにこの思いが強いのは、誰かに対して不和の感情を持っている時です。
どの病人もまず、仲直りをしたいと切に望みます。
そして多くの病人が不和の相手に対し、自分が悪かったと素直に自分の非を詫び、許しを乞い、心の交流を持ちたいと望むのです」
鈴木秀子著『死にゆく者からの言葉』
このような心の交流をもちながら旅立っていく人もその家族も、その別れの時は悲しいけれど、決してそれだけなく、何か満たされるものが後に残るというのです。
死は存在の終わりではない
▼では、このような心の交流をもてずに亡くなってしまった人の思いはどうなるでしょうか・・・。
それについては、はっきりしたことは言えません。
ただ、以下は私が信じている考えです。
死は人生のゴールですが、存在の終わりではありません。
人間は肉体と霊魂からできおり、死によって人間の肉体は滅びるのですが、霊魂は不滅です。
肉体を離れた霊魂は、この世ではない新しい世界に生き始めます。
目には見えない。ですが、亡くなった方の霊魂はいまも存在しています。
そして、すぐ傍らにいてくれることもあるでしょう。
「もう悲しまなくていいですよ。私は幸せです」
「ありがとう。お祈りもしてくれて本当にありがとう」
「いまの私の望みは、あなたが幸せに自分の人生を送っていくことです」
そう思いながら、愛する家族や友人を見守ってくださっているかもしれません。
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【出典】 鈴木秀子著『死にゆく者からの言葉』
実際にあったエピソード集なので読みやすい本です。
生きる意味、死の意味、豊かな愛の絆について考えてみたい方におすすめします。