もし死にたいくらい悲しいことがあったら、とりあえずメシを食え。
だいぶ前に、メルマガに書いた記事ですが、やはりブログにもアップしておきます。
鈴木るりか著『さよなら、田中さん』が面白かったので・・・。
鳥肌が立つほどの才能
▼近年、スポーツ界、棋界など若い才能が飛躍しています。
文学界にも登場しました。
14歳のスーパー中学生作家、待望のデビュー
鈴木るりかさん。
小学館が主催する「12歳の文学賞」を4年生時から史上初3年連続大賞受賞。
「鳥肌が立つほどの才能」などと
あさのあつこ氏、石田衣良氏、西原理恵子氏ら先生方から大絶賛を受けました。
▼14歳の誕生日に刊行した連作短編集
鈴木るりか著『さよなら、田中さん』は、ベストセラー。
こんな内容です。(出版社の紹介から)
『さよなら、田中さん』の内容
田中花実は小学6年生。
ビンボーな母子家庭だけれど、底抜けに明るいお母さんと、
毎日大笑い、大食らいで過ごしている。
そんな花実とお母さんを中心とした日常の
大事件やささいな出来事を、時に可笑しく、
時にはホロッと泣かせる筆致で描ききる。
今までにないみずみずしい目線と鮮やかな感性で綴られた文章には、
新鮮な驚きが。
友人とお父さんのほろ苦い交流を描く「いつかどこかで」、
お母さんの再婚劇に奔走する花実の姿が切ない「花も実もある」、
小学4年生時の初受賞作を大幅改稿した「Dランドは遠い」、
田中母娘らしい七五三の思い出を綴った「銀杏拾い」、
中学受験と、そこにまつわる現代の毒親を子供の目線で
みずみずしく描ききった「さよなら、田中さん」。
『さよなら、田中さん』をイッキ読み
▼私は、昨日、一気に読み終えたのですが、実に面白かったです。
特に、最後の「さよなら、田中さん」には泣かされました。
▼最後の短編「さよなら、田中さん」の1つのエピソードです。
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この短編は、それまでの4編と違って、
主人公(話者)は、田中花実と同じクラスで席が隣の三上くん。
三上くんは、気が弱いのが災いし、クラスの女子からは、
ちょっとした誤解から、いじめを受けています。
家では、母親から優秀な兄や姉と比較され、
毎日夜遅くまで真面目に塾に通っていますが、成績はさっぱりです。
三上くんにとって、以前女子のいじめからさり気なく助けてくれた
田中さんの存在だけが心のよりどころでした。
いつしか田中さんに淡い恋心を抱くようになります。
しかし、自分なりに頑張ったものの
母親が受けなさいと言われた学校の中学受験にすべて敗北します。
母親からを苦しませ、失望させ、あげくに見捨てられます。
すべて自分が悪いと苦しむ三上くんは、
川に身を投げて、この苦しみを終わらせようとしていました。
その時、買い物帰りの田中さんとそのお母さんに声をかけられます。
そして、一緒に田中さんの家で、夕ご飯を食べようと誘われます。
スーパー激安堂から買ってきた、全部半額の食べ物を
田中さん母娘と、わいわい言って食べている途中、
田中さんのお母さんが、三上くんに言うのです。
このお母さんは言葉は荒っぽいが、
ビンボーでも底抜けに明るい人です。
「悲しい時、腹が減っていると、余計に悲しくなる。辛くなる。
そんな時はメシを食え。
もし死にたいくらい悲しいことがあったら、とりあえずメシを食え。
そして、一食食ったら、その一食分だけ生きてみろ。・・・・
そうやってなんとかでもしのいで命をつないでいくんだよ」
このお母さんは、一人娘を育てるために
男たちに交じって日雇い労働をしている人で、
やせっぽちだが、大食漢です。
さらに言います。
「その食べ物をくれる人には感謝しなくちゃいけない。
それは命をつないで、生かしてくれる人だ。
食事を作ってくれる人とか、
食材を買うお金を稼いでくれる人、とかな」
田中さんが、
「じゃあ、今日はとリえあえず、
激安堂のお惣菜担当の人に感謝しなくちゃ」
というと、
「あと、半額シールを貼ってくれた人にもな」
とお母さんが応じて、三人は笑います。
『さよなら、田中さん』の名言
▼こんなふうに泣けて、笑える小説です。
それにしても、
「もし死にたいくらい悲しいことがあったら、とりあえずメシを食え。」
これは名言だなあ。
「その食べ物をくれる人には感謝しなくちゃいけない。」も・・・。
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出典 鈴木るりか著『さよなら、田中さん』
作者の鈴木るりかさんは、小学4年生の時、1日で書き上げた小説が小学館が主催する「12歳の文学賞」で大賞受賞。それから史上初3年連続大賞受賞。
これが『さよなら、田中さん』の基になっています。