言葉は、心にも体にも影響を与えます。
良い言葉は、心を元気に体を健康にして、若々しさを取り戻します。
エミール・クーエという人をご存じでしょうか。
クーエの自己暗示理論
フランス人のエミール・クーエ(1857年~1926年)は、クエイズムとも呼ばれる自己暗示法の創始者。当時は大病であったリウマチ、結核、そして癌患者までをシンプルな暗示一つで治していった人です。
薬剤師であったクーエは、ある時、効きはずのない薬を患者の強い求めに応じて渡したところ、予想に反して効能があったことから、精神が病を克服させるということに気づきました。
それを機に研究を重ね、自己暗示法という精神療法を開発します。
クーエの開発した自己暗示法は、簡単な言葉を繰り返すことで行われます。
言葉は、人間の考えを伝える道具です。
その考えは脳の中だけではなく、脳から全身に情報が送り込まれ、全身の影響を与えます。脳の指令は筋肉だけでなく、全ての内臓器官にも送り込まれます。
私たちの脳や体は、寝ている間も、起きている時も、ほぼ無意識のうちに働いていますが、無意識のうちに言葉によって影響を受けているのです。
例えば、「あなたは病気だ」「重大な病気だ」などと言われた人は、平気ではいられません。普通は、心配に思い、不安になります。
顔は青ざめ、こわばり、笑顔が消えます。毎日言われれば、食欲もなり、夜眠れなくなり、睡眠不足で体調が悪くなるでしょう。
正に、「病は気から」です。
逆に、健康もその人の精神状態によって変わっていきます。
多少、痛いところがあっても「大丈夫、今日も元気だ」と言っている人は、元気なのです。
良い言葉を繰り返すと良い影響がある
クーエは、自己暗示理論の結論をあげています。
「ある考えが精神を独占してしまった場合、その考えは実際に、肉体的もしくは精神状態となって現われる」(エミール・クーエ著『自己暗示』法政大学出版局)
暗示といっても、特に変わった言葉ではありません。
普段自分に言っている言葉そのものが、暗示になります。
顕在意識ではなく、知らず知らず潜在意識(無意識)に働きかけていきます。
言葉は何度も繰り返しているうちに、潜在意識に残り、忘れた頃にプログラムとして動き出し、顕在意識にのぼり行動が実行されるのです。
例えば、「あなたは病気だ」「わたしは病気だ」という言葉は、潜在意識にプログラムをインプットして、様々な悪い結果を体や精神にもたらすのです。
逆に、体や精神に良い影響をもたらす言葉もあります。
クーエは研究の結果から、次の言葉を繰り返し(毎日、数十回)唱えることを提唱しました。
「日々に、あらゆる面で、私はますます良くなっていきます」
毎日言葉に出して繰り返すだけで、意識(潜在意識)が変わり、知らず知らずのうちに体に良い影響が起こります。
『十二番目の天使』にも登場
オグ・マンディーノ著『十二番目の天使』という物語に、エミール・クーエのこの暗示法が出てきます。この物語に出てくる少年ティモシーの言葉です。
ティモシーは野球はうまくありませんが、いつも精一杯のプレーをし、他の子供たちを励ましている笑顔の少年です。彼の口ぐせは、
「毎日、毎日、あらゆる面で、僕はどんどん良くなっているんです」
ティモシーからこの言葉を聞いたとき、監督のハーディングは驚きました。
それは、ビジネスマンとして出世街道を歩み始めた頃、彼の人生によい影響を与えた一冊の本に載っていた言葉だったからです。
その本はエミール・クーエが書いた『自己暗示』(法政大学出版局)
その本のなかで、クーエは、「心身双方の病気のほとんどは、ポジティブな自己暗示によってきれいに取り除ける」と言っていました。
繰り返し言いつづけるポジティブな言葉によって、心身の病気を含む、人生のあらゆる問題を解決できると主張したのです。
その主張を裏付ける上で最も大きな役割を果たしたのが、
「毎日、毎日、あらゆる面で、自分はどんどん良くなっている」
というフレーズでした。実は、ハーディング自身も若い頃、繰り返し言いつづけた言葉だったのです。
『十二番目の天使』は、この言葉を繰り返し、健気にも常に前向きに精一杯生きるティモシー少年が実にさわやかな感動の物語です。