いい話

暗い雲の下でも(アン・サリバン)

もっとも暗い雲の下でも、
人間は清らかに美しく、
楽しく生きられる。

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アン・サリバン
(1866-1936)
アメリカの教育者

三重苦の偉人、ヘレン・ケラーは「奇跡の人」と言われますが、彼女を50年間に渡って教え導いたアン・サリバンこそ「奇跡をつくりだした人」です。

実は、アン・サリバンも悲惨な少女時代を送っています。

彼女は貧しいアイルランド系の移民の子でした。
お母さんはアンが8歳のときに亡くなり、お父さんはアルコール中毒。
誰も面倒を見てくれる人がいないために、アンと弟のジミ-は国の救貧院に送られました。

酒や麻薬中毒者、病人や精神病患者たちが押し込まれた救貧院で、幼い二人は悪夢のような日々を送ります。
そのうち、ジミ-は救貧院のひどい環境のなかで、亡くなってしまいます。
アンも精神分裂症にかかり、医者からは完全に見放されていました。

しかし、あるとき、そこを視察にやってきた福祉事業家の腕にしがみついため、彼女は救い出されます。
そして盲学校に送られ、学問を学ぶことができたのです。

アン・サリバンがヘレン・ケラーと初めて出会ったとき、彼女は二十一歳になっていました。
全盲ではありませんでしたが、目を冒す慢性の病に悩まされる、学校を出たばかりの教師だったのです。

見えない、聞こえない、話せない、三重苦。
そのために、野獣のようにわがままに振舞っていたヘレンをすべての教師は見放しました。

しかし、アン・サリバンだけは違いました。
想像を絶する忍耐力と愛情で、ヘレンを教え導いたのです。
冒頭でご紹介した言葉は、アン・サリバンが、後にヘレン・ケラーの人物像について語ったものの一部です。

「彼女は人々の思いやりの心を引き出し、やさしい感情を実行にうつすだけではありません。もっとも重い障害をもちながら、こんな偉業を成し遂げられること、そしてもっとも暗い雲の下でも、人間は清らかに美しく、楽しく生きられることを人々に教えているのです。
アン・サリバン著『ヘレン・ケラーはどう教育されたか』

「もっとも暗い雲の下でも、人間は清らかに美しく、楽しく生きられる」こと。
これを身をもってヘレンに教えたのは、彼女の生涯の師アン・サリバン自身
ではなかったでしょうか。