松原ななみ著『天使のラストメッセージ』という本を読みました。
涙がでるくらい感動しました。
そして、どうしてもお伝えしたくなりました。
人の生と死の意味を問う、優しい詩とエッセイで構成された美しい本です。
倒れた時に前を向いていたい
僕は、人生いつどこで倒れても、
倒れた時に前を向いていたいと思っている。
そんなふうに生きていたいと
いつも考えているんだ・・・
松原ななみ著『天使のラストメッセージ』から
著者の松原さんは、商社勤務を経て、ナースとなり、医療現場でたくさんの患者さんの死と直面してこられた方です。
人の死は、悲しく厳粛なもの、死を扱う話は縁起でもないと、とかく日本では敬遠されがちです。
でも、この本には暗さのなかに光が、悲しみの先に喜びが感じられるのです。
詩やエッセイの全編には、著者の患者さんへのあたたかな思い、感謝、さらには患者さんとの天国での再会への期待感もつづられています。
天国へ旅立った患者さんが残してくれた言葉や思い出は、彼女にとっては「天使からのメッセージ」であり、ご自身の「心の糧」として、いまでも彼女のなかに生きているのです。
さて、冒頭にご紹介した言葉は、かつて松原さんが商社勤務をされていたときに、同僚の男性から聞いたものです。
北陸の工場からその商社に出向してきた彼を、松原さんは兄のように慕っていました。
殺伐としたフロアのなかで自分よりずっと若い商社マンに厳しい言い方をされても、まったく動じないで、黙々と誠実に仕事をする人だったそうです。
あるとき松原さんは、その人に、どうしてあんな状況で笑っていられるのか、どうして腹が立たないのか、と問い詰めたことがありました。
北陸なまりの話し方の、おだやかな彼は、こう答えたそうです。
「僕は、人生いつどこで倒れても、倒れた時に前を向いていたいと思っている。そんなふうに生きていたいといつも考えているんだ・・・」
人生のゴールをみつめることで、今を大切に生きる
後に、彼は故郷に帰り、体の悪いお母さんのために癒しの水を取りに行く途中、交通事故に巻き込まれて亡くなります。
「あれから私は多くの人の最期に立ち会う中で、彼がいつも人生の終わりを意識していた意味を少し理解するようになりました。
やがてくる自分の死を見つめることは、つまり今をしっかり生きるということです。
彼はいつ自分に『天国への帰還命令』が下っても後悔のない生き方を求め、文字通りそう生きたのでした」
『天使のラストメッセージ』を読む限り、彼のこういう生き方を著者自身も受け継ぎ、心がけていらっしゃるのは、間違いがありません。
死、つまり人生のゴールをみつめることで、今を大切に生きること。
いつ死んでも、後悔も未練もない生き方をすること。
皆さんにとっても、そんな生き方への決意を促され、励まされる機会になればと願ってご紹介しました。
いつ死んでも、後悔も未練もない生き方をしよう。
出典:松原ななみ著『天使のラストメッセージ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)