『とべないホタル』という絵本があるのをご存じですか。
シリーズ化され、大ベストセラーになっています。
もともとこの本は、昭和30年ごろ、富山県の小学校教師であった小沢昭巳さんが、「いじめをなくそう」と思い、学級新聞にホタルの童話を書いたのが始まりです。
では、どのようにしてこの童話が広がっていったのでしょう。
『とべないホタル』が広がった経緯
物語の内容そのものには、いじめを示すような内容は登場しません。
物語は、校内放送にもなりますが、やがて忘れられます。
その32年後、小沢さんは様々な学校での勤務の後、その童話を書いた小学校へ校長として戻ってきます。
その時、同校では再び「いじめ」が教師父兄の間で問題となっていました。
対策に頭を悩ませていたところ、会議で、ある母親から「昔、校長先生が作ったあのホタルの話を……」との声が上がりました。
その母親は、小沢さんが一教師として勤務していた頃に小学校に通っていた卒業生でした。
30年間以上も前に聞いた物語が、彼女に中に生きていたのです。
小沢校長は、埋もれていたその物語を見つけ出し、いじめのあったクラスで『とべないホタル』の話を読み聞かせると、子どもたちの様子が一変します。
家に帰って、親にこの物語のことを感動しながら話します。
「今日、学校ですごくいいお話を聞いたよ」って・・。
そのうち、親たちは「もっとたくさんの子どもたちに……」とPTAで小冊子を作ることを思い立ちます。
さらに小学校の放送委員の児童たちによって、この物語を題材にした校内放送番組が制作されます。それが地域に広がります。
この動きがマスコミに注目され、『とべないホタル』が出版・発売されたのです。
『とべないホタル』第1話
さて、『とべないホタル』第1話は、こんなあらすじです。
夜、ホタルたちが光輝きながらうれしそうに空を飛んでいる中、一ぴきだけ、どうしても飛ぶことのできないホタルがいました。
生まれつき羽が歪んでいるためです。
仲間たちは、とべないホタルを励ましますが、どうすることもできません。
どう接していいのかも、わかりません。
そのうち仲間は、とべないホタルは、ひとりぼっちになってしまいます。
でも、仲間たちはどうしたらあげたらいいのか、どう接していいのか、考えていたのです。
その時、ホタルがりをしに人間の子どもたちがやってきます。
とべないホタルは、見つかってしまいますが、逃げることはできません。
その時、ある一ぴきのホタルが男の子の手の中に降りてきました。
とべないホタルは、そのホタルが自分の身代わりになってくれたと悟ります。
この事件を機に、とべないホタルは仲間たちが自分のことを思っていてくれていたことを知ります。
さて、ホタルをつかまえた子どもたちは、家に連れ帰り、妹のひろちゃんにホタルを見せてやりました。
足が悪くて外に出られない妹のひろちゃんは、ホタルが飛ぶのを見て、うれしそうにしていました。
この勇気ある優しいホタルは、ひろちゃんのために、せいいっぱい飛んで、おしりを光らせました。
逃げようと思えば、いつでも逃げられたのに……。
(その後、このホタルは、とべないホタルたちのもとへ無事、帰っていきます)
わたしたちは、ひとりではない
なんと優しい世界でしょう。
わたしは、この本を読んで考えるのです。
わたしたちは、ひとりではない。
あなたも、ひとりではない。
わたしやあなたのことを考えてくれている人が、必ずいます。
だって、あなたも困っている人がいれば、その人のことを思い、その人のために何かしてあげたいと思うでしょうから。