「掃除はその場所をきれいにすると同時に、掃除をした人の心のなかや、頭のなかの流れをよくしてくれるのです」(鍵山秀三郎著『頭のそうじ 心のそうじ』)
「心の糧」の読者Yさんのご紹介で、先日、鍵山秀三郎さんと先日、お会いすることができました。
鍵山秀三郎氏の「凡事徹底」
鍵山秀三郎さんは、イエローハットの創業者で、国内外で活躍するNPO法人「日本を美しくする会」の提唱者です。
京都へは東山中学・高校の創立143年記念の講演会のためにこられたのですが、その前日に少し時間をとっていただくことができました。
鍵山さんは大会社の社長だった人とはまったく思えない、腰が低く、気さくな方です。
誠実さと温厚さが、全身からあふれていらっしゃいました。
▼鍵山さんが提唱する「凡事徹底」のひとつとして、50年間以上も掃除を実践してきた人です。
鍵山さんは「掃除によって人は変わる」は言います。
その事例をここでは詳しく紹介しませんが、鍵山さんが50年間以上の実践に裏づけられた事実です。
社会を良くし人を幸せに
▼きっかけは、鍵山さんが創業した会社(現イエローハット)を理想の会社にしようと思ったことです。
活動を通じて、社会を良くし、人を幸せにする会社にしたい。
そのために必要なのはいい人材だ、と鍵山さんは考えました。
しかし、できたての小さな会社で、いい人材を確保するのは至難の業です。
ちょうど高度経済成長期で、ひどい人材不足。
集まった人は、いくつもの会社を渡り歩いた末に心がすさんだ人が多かったの
です。
はじめ、会社は少しもうまくいきませんでした。
社員の気持ちは荒み、それでまた商売がうまくいかなるという悪循環に陥っていました。
▼悩んだ鍵山さんは、社員のためにせめて自分が職場をきれいにし気持ちよく働いてもらおうと思いました。
毎朝、誰よりも早く出社して、トイレ掃除からはじめて、仕事場、廊下、玄関まで、毎日黙々と掃除することにしたのです。
「なぜ社長が掃除を?」と、初めは訝しく思っていた社員たちも、職場がきれいになったことで、様子が少しずつ変わっていきます。
社員の表情が明るくなり、元気がでてきました。
サービスにも心をこめてできるようになっていきました。
その前向きな姿勢は、商売にも好影響を与えるようになっていきます。
まさに掃除によって、社員の人間性、そして会社が少しずつ成長していったのです。
▼それ以後も業績は順調に伸び、現在の発展に至っています。
また鍵山秀三郎さんが提唱したNPO法人「日本を美しくする会」は、「掃除を通じて、世の中から心の荒みをなくしていきたい」 との思いで、いまや日本全国だけでなく外国にまでその活動を広げています。
掃除をすると何が良くなるのか
ご著書を拝見してまとめと、その変わり方には、一般に、次のようなプロセスがあるように思います。
・掃除をしてきれいになると誰かが喜んでくれる。
・きれいになったことで誰かの心が穏やかになる。
・そのことで自分もうれしくなる。
・自分の心も磨かれ、きれいになっていくように思える。
・自分の人相が知らず知らずよくなる。
・モノを大切にするようになる。
・人を大切にするようになる。
・人間関係がよくなる。
・社内の雰囲気がよくなって、活気がでてくる。
汚れていた場所が、自分の働きで、きれいに磨かれていく。
すると、自分の心も磨かれたような気持ちになり、頭もすっきりクリアーになっていく。
そんな経験が誰にでもあるのではないでしょうか。
掃除は、誰にでもできる自分磨きの仕事、そして、多くの人に喜ばれる仕事なのです。
街角で、どこかの建物の中で、学校で、一所懸命に掃除をしている人の姿をみると、私は心の中で頭が下がります。
「おかげさまで、きれいになっていきます。どうもありがとう。」
そう思うのです。
する人も、しているのを見る人も、心が穏やかになっていく。
掃除は、そんな仕事です。
掃除をしてきれいにしよう。
自分の周りも自分もきれいになります。
【出典】鍵山秀三郎著『日々これ掃除』
鍵山秀三郎著『掃除道~会社が変わる 学校が変わる 社会が変わる』
この本は、東山中学校の課題図書だそうです。