言葉には力があります。
自分の願いを心の中にしまっておくのではなく、言葉にして繰り返せば、願いがかなうことがあります。
願いが100%かなわなかったしても、その願いに相応しい自分に変わっていきます。
そんなお話をご紹介します。
北海道の特別少年院で
北海道帯広の特別少年院の女性法務教官Kさんのお話です。
Kさんは、16年間、少年院でカウンセラーしている方で、仕事の大半は少年たちの話を聴くことです。
「何回もヤクをやめようと思ったけど、どうしても止められない。自分はもうダメなんだ」
覚醒剤で何度も少年院を体験してきた19歳の少年が首をうなだれて何度も同じ言葉を繰り返します。
「自分はこの少年院を出たら、またダメになってしまう」
「自分はダメな人間なんだ」
ということを何度も訴えるのです。
しかし、少年がふと漏らした本音がありました。
「先生、本当は自分は普通の生活がしたいだ」
Kさんは、この言葉に希望を見出し、すかさず少年にすすめます。
「じゃあ、『普通の生活がしたい』『普通の生活がしたい』と常に心の中で念ずるか、言葉に出して何回も何回も言いなさい」
「先生、ダメなんだ。ここを出たらまた繰り返してヤクをやるよ。
普通の生活はできないし、その生活がどんなものかもわからない」
「わからなくてもいいの。機械的でいいから、『普通の生活がしたい』って何回も絶えず言い続けなさい」
少年はその言葉に従いました。
少年たちに変化が起こる
すると、少年は次第に変わっていきました。
Kさんとのカウンセリングのとき、覚醒剤の話を一切しなくなったのです。
「どうしたの?この頃、覚醒剤の話をしないけれど」
「先生、そんなこと考えてるヒマないよ。ここを出たら、やりたいことが一杯あるんだ」
目を輝かせてそう言うのです。
そうして、少年の院内生活は模範的になり、1年あまりで出院できました。
最後のカウセリングで、少年は言いました。
「先生、自分は先生から言われたとおりやってよかった。だから、今度もし覚醒剤で入ってくる人がいたら、同じように言ってあげてください」
これは、Kさん自身が日々行っている方法です。
自分の願いを言葉にする。
それはKさんにとって祈りなのです。
彼女は、毎朝、少年院の建物がある場所より、いくつか前のバス停で降りる習慣がありました。
そして、少年院までの道のりを20分から30分ほどでしょうか、歩きながら、毎朝、少年たちのために祈りを唱えていたのです。
Kさんは、以後も、カウセリングを通して、少年たちに願いの言葉を祈りにするすべを伝えてきました。
少年たちは、少年院に来るまでの様々な社会現象に巻き込まれ、傷つき、人間不信に陥っています。
「親が許せない」「母親が憎い」・・・
そういう負の感情でいっぱいです。
Kさんはそんな少年たちに勧めます。
「『許せるようになりたい』と口ぐせのように繰り返しなさい」
すると、これも効果てきめんでした。
何回目からのカウセリングで、「先生、許せるようになった」と輝いた顔を見せるようになります。
少年たちは心が負の状態から解放され、人間的に成長していくようになるのです。
言葉は自分を変える
「~したい」「~になりたい」
これらは希望のある前向きな言葉です。
このような前向きな言葉を繰り返すと、人は前向きな気持ちや行動に変わっていくのです。
あなたも、
「~したい」「~になりたい」
と何度も繰り返してみてください。
潜在意識が変わり、心が変わります。
行動が変わり、習慣が変わります。
運命が変わり、人生が変わります。
「~したい」「~になりたい」
これらは祈りの言葉にもなりえます。
祈りはきっと恵みをもたらします。
自分の願いを言葉にして繰り返そう。
口ぐせにすれば自分が変わっていきます。(^.^)
【出典】月刊誌「聖母の騎士」1993年2月号より