いい話

奥さんの足の裏をもんで気づいたこと(東井義雄)

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「すまんのはこっちだ」

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兵庫県の養父市での講演に三重県から来られた,メルマガ【心の糧】読者の安田和弘さんから、1冊のご本をいただきました。

神渡良平著『孤独になる前に読んでおきたい10の物語』

この本には、様々な素晴らしい方の物語が取り上げられています。

その中の一人、兵庫県の但馬地方の教育者、東井(とおい)義雄先生のことをご紹介します。

▼東井義雄(1912~1991)先生は、食べる物も欠く貧しい生活のなかで、教職を志し、寺の住職でありながら、小学校教師として、子ども、親、村を育てる素晴らしい教育を実践。

「教育界の国宝」と言われ、ペスタロッチ賞、平和文化賞、小砂丘忠義賞、文部省教育功労賞受賞などを受賞されている方です。東井義雄記念館もできています。

▼本の中には、東井義雄先生のこんな物語がありました。

短く要約してお伝えします。

東井先生が、講演先で尊敬する方から、

「ぜひ足の裏をもませてください」

と頼まれ、恐れ多くも、そうしていただきました。

そして、その方から宿題を出されます。

「先生が留守の間、お寺を守っていらっしゃる奥さんに同じことをして差し上げてください」と。

東井先生は、寺に帰ると、訳を話して奥さんに足の裏をもませてくれるように頼みました。

無論、奥さんは嫌がります。

しかし、尊敬する先生と約束したことだからと頼み込んで、足袋をぬがせました。

愕然としました。

現れたのは、熊の足のようなゴツゴツした足の裏だったのです。

(気づかなかった。ちっとも気づかなかった)

自分が教職者としてチョーク一本をにぎって教えているときに、妻が寺を守るために、重い薪(たきぎ)や農作物を背負って、岩角がゴツゴツした山道を歩いてきた長年の苦労に、思いが至りました。

奥さんの足をもませてもらいながら、東井先生は目頭が熱くなりました。

(自分は、先生、先生とあがめられて、ついついいい気になっていた。

教育の世界では何かを成し遂げたかもしれないが、人間的には、家内のほうがずっとすぐれている。

そんな家内に自分は感謝してきただろうか・・・

▼そんな経緯から、次のような詩が生まれたそうです。

「何もしてあげることができなくてすみません」

ポツリとそんなことを言う妻

「何もしてあげることができなくてすまん」のはこっちだ

着るものから、食べるものから、

パンツの洗濯までしてもらってばかりで、

「何もしてあげることができなくて」いるのはこっちだ

しかも妻に「すみません」といわれるまで

「すまんのはこっちだ」ということさえ気づかなかった

こっちこそ

ほんとうにすまん

▼東井義雄先生は、謙虚で誠実で、物事への気づきが深く、人間ひとり一人を大切にした素晴らしい教師でした。

こんな詩を書かれ、信条とされていました。

    どの子も子どもは星

どの子も子どもは星

みんなそれぞれがそれぞれの光をいただいて
まばたきしている

ぼくの光を見てくださいとまばたきしている

わたしの光も見てくださいとまばたきしている
光を見てやろう

まばたきに 応えてやろう

光を見てもらえないと子どもの星は光を消す

まばたきをやめる

まばたきをやめてしまおうとしはじめている星はないか

光を消してしまおうとしている星はないか

光を見てやろう

まばたきに応えてやろう

そして
やんちゃ者からはやんちゃ者の光

おとなしい子からはおとなしい子の光

気のはやい子からは気のはやい子の光

ゆっくりやさんからはゆっくりやさんの光

男の子からは男の子の光

女の子からは女の子の光

天いっぱいに

子どもの星を
かがやかせよう

『東井義雄詩集』より

 

私たちも間違いなく誰かに支えられています。 (^.^)

【出典】神渡良平著『孤独になる前に読んでおきたい10の物語』
これまで神渡良平さんが講演やご本で紹介された感動的な話を取り上げた素晴らしい本です。

私の講演会を主催してくださった西村徹先生の話も取り上げられています。西村先生は、東井先生の校長時代の最後の教え子。そして、その教えを継ぎ素晴らしい教師になっておられます。

『東井義雄一日一言 いのちの言葉』の編著者でもある方です。