▼「聞く力」を高めたいという人におすすめしたいのは、阿川佐和子著『聞く力―心をひらく35のヒント』、2012年のベストセラーN0.1の本(ミリオンセラー)です。
阿川さんは「週刊文春」の対談ページ「阿川佐和子のこの人に会いたい」の連載を20年近く、1000人近い人とのインタビューをこなし、テレビでも長くインタビューの仕事を続けてきました。
阿川さんを前にすると、10代のアイドル、マスコミ嫌いのスポーツ選手、
財界の大物ら、だれでも心を開いてあれこれと話すのです。
なぜでしょう?
そのコミュニケーション術を公開したのが本書です。
▼しかし、ご本人はこうおっしゃいます。
「これだけ場数を踏んでいるのだから、アガワはインタビューの極意を
会得しているに違いない、と思われているきらいがありますが、謙遜でもなんでもなく、その実感はまったくありません」
「当初は「下手」と言われることはあっても、褒められることはほとんどなく、苦手意識さえもっていたほどです。約20年前に「週刊文春」の連載対談がスタートしてからも、少しは進歩したかな??と自信がつきかけると、次は思うようにいかない、の繰り返し」
「この連載が5年目に入った頃、コラムニストの山本夏彦さんにゲストに
出ていただいたときには、『君は学習しない人だね』と苦笑されたことも
あります。結局、いまに至るも、苦手意識は拭えないままなのです」
▼私は、阿川さんの「苦手意識は拭えないまま」がいいのだと思います。
もしも話を聞く人が
「私はインタビューのプロだからね。私のテクニックであなたの本音を引き出してあげるわよ」
という「上から目線」の態度だったら、話す方は決して心を開かないでしょう。
▼阿川さんはそうではありません。
まったく逆。
「苦手意識は拭えないまま」、目線はほとんどの場合、自分を低く置いて話を聞いていらっしゃるのです。
しかも、阿川さんは自分の失敗、(たとえばお見合いを30回以上やって、いまだに独身、トホホ・・・)という話も隠さない。(その後、めでたく結婚されたそうです。おめでとうございます)
ですから、話す方は変に身構えることなく、気楽に話せるのでしょう。
▼人の話を聞くために様々な技はあると思います。
ただ、その前に心がけておきたい大切なことを阿川さんはこう語っています。
「話を聞く。親身になって話を聞く。それは、自分の意見を伝えようとか、自分がどうにかしてあげようとか、そういう欲を捨てて、ただひたすら『聞く』ことなのです。」by 阿川佐和子
▼これは特に悩みを聞くときの極意だと思いました。
相手をどうにかしてやろうなんて考えずに、ただひたすら「聞く」。
特に女性の場合、それがいいそうです。
男性は結論を急いで出そうとしますが、女性は、たいていの場合、それは望んでいない。
まず自分の気持ちを聞いてほしいのです。受けとめてほしいのです。
▼女性でも男性でも、話すほうは、親身になって聞いてくれる人になら、
心を開いて話したくなります。
ひたすら受け入れてくれる人になら、本音を語りたくなります。
そして、たいてい場合、話すことで心が落ち着いて、スッキリして、
聞いてくれた人に感謝の気持ちがわいてくるのです。
人の話は親身になって、欲を捨てて、聞く。 (^.^)
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【出典】 阿川佐和子著『聞く力―心をひらく35のヒント』
100万部を超すミリオンセラーになりました。阿川さんは、肩の力を抜いたエッセイの妙手なので話が面白い。女性の話を聞くのが苦手な男性とついしゃべり過ぎてしまう女性にお薦めします。(笑)