人から注目されなくても、まわりの人のために、黙々と働き、長年努力している人は偉大です。
「魂の偉大さのかげにひそむ、不屈の精神。心の寛大さのかげにひそむ、たゆまない熱情。
それらがあって、はじめて、すばらしい結果がもたらされる。
この、神の行いにもひとしい創造をなしとげた名もない老いた農夫に、わたしは、かぎりない敬意を抱かずにはいられない」
ジャン・ジオノ著『木を植えた男』
『木を植えた男』は偉大な男?
毎年、各分野でのノーベル賞授与やスポーツの国際大会での金メダルなど、華やかにニュースが大きく報道されます。
でも、その陰に隠れた、その他多くの陽の目を見ない人のことが気になります。
わたしたちの多くは、人知れず、地道にがんばっていると思います。
しかし、そのほとんどの人は世界的な賞をもらう栄誉を受けたわけでもなく、大勢の人から賞賛や感謝を受けてきたこともないでしょう。
ジャンジオノ著『木を植えた男』に出てくる主人公の「男」もそうです。
有名な話ですが、この本のあらすじはこうです。
本のあらすじ
1913年、フランスの荒れ果てた高地をあてもなく旅していた若い「私」は、この荒野で一人暮らしをしている寡黙な初老の男に出会います。
彼は、誰の土地かは知らないが、この荒れた土地を蘇らせようと思い立ち、3年前から木の種子を植え始めていました。
10万個植えた種子のほとんどは駄目だったが、1万本ほどは育つ見込みがあると事も無げに言います。
彼は、その1つ1つを自分の手で荒野に植えてきたのです。
第一次世界大戦を挟んで、5年の歳月が過ぎます。
その間も、男は木の種を植え続けました。
10年、15年、20年・・・。
男は、黙々と木を植え続けます。
男の計画は常に成功したわけではなく、1年がかりで植えたカエデが全滅するなど悲劇に見舞われることもありました。
それでも彼は挫けることなくひとり木を植え続け、荒野には木々が成長し、次第に美しく豊かな森ができていきます。
しかし、木々の復活はあまりにゆっくりとした変化だったため、
まわりの人は彼の仕事に気付かず、ときどき訪れる猟師などは森の再生を「自然のきまぐれ」などと考えていました。
また、森林保護官が「自然に復活した森」に驚き、そこに住む彼に「森を破壊しないように」と厳命されることもありました。
しかし、そういったことも関係なく、ブフィエは黙々と木を植え続けました。
第二次世界大戦中も様々な危機を乗り越え、いつしか森は広大な面積に成長していました。
森が再生したことで、かつての廃墟にも水が戻り、新たな若い入植者も現れ、楽しく生活するようになります。
しかし彼らは男の存在も、ひとりの男が森を再生したことも知りません。
男は1947年、養老院で安らかに息を引き取ります。
目立たない小さな仕事
私たちも地道に人のために行っている小さな仕事があるかと思います。
たとえば、ゴミを拾う、掃除をする、などもそうでしょう。
ほとんどの場合、誰からも感謝もされず、褒められることもないかもしれません。
それでも、地道にコツコツやっていく。
人のために。
見返りを求めずに。
困難や無理解も気にせずに。
世の中の幸せは、目立たないけれど、そういう人のおかげで成り立っていると思います。
そういう人のおかげで、この世は美しく豊かなものになっているのだと忘れるわけにはいきません。
【出典】ジャン・ジオノ著『木を植えた男』 物語を大人向け絵本にした素晴らしい作品です。