2016年に京都や東京で行った「夢かなえ塾」では「絵本に生き方を学ぼう!」がテーマだったことがあります。
絵本は子どもが読むもので、いい大人が読むものではないという考えがあります。でも、私はまず大人が読んで子どもに紹介するものだと考えています。これは福音館書店の松居直さんもおっしゃっていました。
さらに、良い絵本からは、大人もいろいろと学ぶことができます。
その人の関心や知見や経験などによって、何を学べるか、どれだけ深く学べるか違ってきます。
ですから絵本は面白いのです。
では、絵本から生き方を学んでみましょう。
『ぐりとぐら』から学ぶ
まず、『ぐりとぐら』という絵本を取り上げました。
『ぐりとぐら』は、ふたごの野ネズミ「ぐり」と「ぐら」のお話。
1963年発行以来、長く愛され続け、日本国内だけで、500万部以上も発行さている名作です。
まず、ストーリーです。
「ぐり」と「ぐら」のふたりは、なかよし。
そして、おりょうりすること、たべることが大好き。
歌いながら森へでかけると、大きなたまごを発見します。
大きなカステラをつくろうと 家にもって帰ろうとするのですが、大きすぎてどうしても運べません。
しかし、失敗にめげないのです。
これではダメだと思ったら、発想を転換します。
「それじゃあ、おなべをもってきて、ここで作ろう」
そして、さらに楽しいアイディアを出してすぐに実行するのです。
カステラを作っている途中、森の動物たちがぞろぞろとにおいにつられてやってきても、ふたりは嫌がりません。
「ごちそうするから、まっていて」
そして、みんなにできたカステラを惜しみなく分けてあげるのです。
最後にのっこったのは、大きなおなべと大きなたまごのからだけ。
「さあ、このからで、ぐりとぐらはなにをつくったとおもいますか?」
という文章は終わり、次の頁には、たまごのからで作った自動車にさっそうと乗っているぐりとぐらの絵。
そのユニークな発想に、思わず笑いがこぼれます。
以下は、私が学んだことの1つです。
好きなことを通して、人は自分を活かせます。
好きなことを通して、他の人のために貢献できます。
おりょうりすること、たべること、歌うこと、絵本を読むこと、など、など・・・好きなことを通して幸せになれます。
楽しく自分の世界が広がる
絵本の読み聞かせは、絵本セラピストのお二人にしていただきました。
さすがに上手でした。
そして、参加者それぞれの気づきを発表し、学び合いました。
後で、帰りの電車から御礼メールをくださった方のご感想です。
「皆様の気づきを聞くことによって、同じように感じる人もいたり、そんな風に感じる事もあるのかと驚いたり、とても楽しく自分の世界が少し広がった気がしました。」
同じ絵本でも、人によって気づくことが違います。
人の気づきを聞くだけで、勉強になります。
新しい見方を知り、自分の世界が広がっていきます。
ある参加者が学んだこと
話し合ってみるとよくわかるのですが、同じ絵本を読んでも、人によって感じるものが違います。
その人の人生経験、そのときの心情、問題としていることなどによって、違うのです。
大人は、自分が感じたこと、気づいたことを言葉にすることができます。
田村克志先生(小学校の先生)のご感想です。
「夢かなえ塾」ありがとうございました。
あの2冊の絵本は我が子が小さい時に何度も読み聞かせをしました。
30年近いブランクがあるのですが、内容や文を記憶していました。
でも今回、初めて読み聞かせしていただき、皆様の感想と共に僕の心に響くものがありました。
『ぐるんぱのようちえん』
心のどこかで、「僕なんか独りぼっちで誰の役にも立てない」と思っていたぐるんぱを仲間たちは
自己肯定感や自己有用感を持たせるために「はたらきにだそう」
と温かく送り出しています。
信じてくれる仲間がいたぐるんぱは、張り切って出かけます。
心を込めて精一杯作るのですが、「大きすぎる」と断られます。
断られても前向きで頑張れたのは、自分を信じて送り出してくれた仲間がいたからだと思います。
「子どもと遊んでやって」と頼まれたぐるんぱは、きっと自己有用感に気づいたのでしょう。
幼稚園を始めて、要らないと断られた物も役立てています。
「自分自身も、自分が作った物も、自分が歩んできた人生で得たものもいつかきっと誰かの役に立つんだ」
この絵本は、僕にそんなことを気づかせてくれたように思います。
『ぐりとぐら』
この絵本からは、自分たちが見つけた物を自分たちが独り占めするのではなく、全ての人に分け与える。
誰かが喜んでくれることが嬉しい。
「他人の喜びを我が喜びごととして追及できる価値観」を心の片隅に置いておくことの大切さに気づかされました。
自分の得意なこと、好きなことで誰かが喜んでくれたら、こんなに嬉しいことは他にはないと思います。
その得意なことも好きなことも、自分だけで身に付けた技能では有りません。
誰かに教えていただいたことばかりだと思います。
教えてくださった方たちは、遠くにいる人かも知れないし、この世におられない人かも知れません。
恩返ししたいと思っても出来ないことの方が多いでしょう。
学んだことを誰かに伝える「恩送り」ならより多くの人に伝わります。
さらにレベルアップしていくことでしょう。
僕が好きな言葉です。
「あなたの中の最良のものを、この世界に与えなさい。
たとえそれが十分でなくても気にすることなく、
最良のものをこの世界に与え続けなさい」
(マザーテレサ)
「自分が良いと思ったことを誰かに伝え続ける」
そんな想いで子どもたちの前に立ち、毎日10分ぐらいお話をしています。
中井先生はじめ、参加された皆様に感謝です。
K.TAMURA
田村先生、ありがとうございました。
『ぐるんぱのようちえん』については、
「自分自身がこれまでやってきたことは、決してムダではない」
「失敗したことも、いつか役に立つことがある」
「ダメだと思っていた人に素晴らしい価値がある」
という気づきも、他の人からありましたね。
本当にそうだと思います。
私も「ぐるんぱ」のように、チャレンジしても失敗することがあります。
けれども、「ぐるんぱ」のように、何度もやってみます。
皆さんの温かい応援が支えです。
『ぐりとぐら』については、田村先生らしいご感想だと思います。
「あなたの中の最良のものを、この世界に与えなさい」(マザーテレサ)
という言葉が出てくるとは意外でした。
この田村先生のご感想を読んで私も考えました。
私たちには、確かに与えるものがあります。
私たちの中にも最良のものがあります。
これまで与えてもらった良いものが私たちの中にたくさんあります。
良い言葉。
良い話。
良い絵本や良い本、などなど、いっぱい。
それらは、私たちの中にあって、私たちの心を養い、成長させてきました。
いま、自分と共にあります。
私たちは、その良いものを人にも与えることができるのではないでしょうか。
そうすることで、人と人はつながり、互いに助け合ことができます。
与えることで、幸せになれる人がどこかにいます。
家庭、職場、学校、社会に。
与えることによって誰かが幸せになれます。
それは、目の前の人、自分、まわりの人。
まだ会ったことのない人の中にも・・・。
懇親会のときに聞いた、ちょっといい話
Aさんは何度も子どもにせがまれて読んだ絵本を子どもが大きくなって読まなくなったので、若い友人Bさんにあげたそうです。
それらの絵本は、そのBさんの家でもやはり何度も何度も読まれたそうです。
けれども、いつしか子どもが大きくなって読まなくなったので、Bさんは、その絵本をAさんに返しました。
何十年ぶりでしょうか?
Aさんは、いまそれらの絵本を孫にせがまれて読み聞かせしているそうです。(笑)
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【出典】 なかがわ りえこ文、 おおむら ゆりこ絵『ぐりとぐら』 西内ミナミ文、堀内 誠絵『ぐるんぱのようちえん』