物事がうまくいくには基本な原則があるものですね。
子育てや教育においても、子どもが伸びるために効果的にほめる原則があります。
7つほどご紹介しましょう。
どれか1つでもお役にたてば幸いです。
原則1 子どものありのままをほめる
子どもが期待通りのことをできたらほめてあげようと、考えていると、どうしてもほめ言葉は少なくなってきます。
なぜなら、子どもは失敗もしますし、がんばっても親の期待にいつも応えられるわけではありませんから。
そんなとき、親は子どもを激励するつもりで、「もっとがんばってね」と言いがちです。
しかし、子どもはそう聞くと、「自分はがんばってもダメだ。がんばっても、またがんばれと言われるに決まっている」と考えて、やる気がなえてしまうものです。
子どもは、できれば自分のがんばったことを親から認めてもらい、ほめてもらいたいと思っています。
期待通りの結果は出せないけれど、それでも自分なりにがんばっている、ありのままの自分を見ていてほしいし、認めてほしいのです。
そんな気持ちを汲んで、いまの状態でも「がんばってるね」「よくやってるね」「ここまで続くのはなかなかできないことだよ」などと認めてあげるのです。
それが「またこの次もがんばろう」「もっとがんばろう」という子どもの意欲につながります。
原則2 気前よくほめる
子どもをほめるときに、「当たり前」は禁句です。
親が「そんなことはできて当たり前」と考えていると、子どもをほめることができなくなってしまいます。
大人にとっては当たり前でも、成長過程にある子どもにとって当たり前ではないことは多いものです。
あいさつすることも、一人で着替えをすることも、残さず食べることも、かたづけをすることも、習慣になっていなければ子どもにとっては決して当たり前ではありません。
それらの当たり前のことが習慣になるまでは、ほめたり叱ったりして続けさせるのが親の役目です。
その際、やはりほめることが中心です。
誰でもほめられた方がうれしいし、ほめられたことは続けてやりたくなります。
子どもの立場に立って、気前よくほめるのです。
「わっ、すごい。一人で起きられたね」と言ってあげるだけでいいのです。
「今日も、一人でおかたづけができたわね」と笑顔で声をかけるだけでいいのです。
「あっ、野菜が食べられたね」と、言ってニコッと笑いかけるだけでいいのです。
ほめ言葉をケチるより、どんどん気前よくほめるのです。
当たり前のことなんかないと思って、どんどんほめてあげるとよいでしょう。
原則3 言動を具体的にほめる
ほめられる者の心理としては、自分を個別にほめてもらった方がうれしいものです。
さらに誰にでも当てはめる漠然としたほめ言葉よりも、自分のどんなところがよいかを具体的にほめてもらった方が喜びも増します。
たとえば、「いい子だね」と何度も判を押されるようにほめられるよりも、「お手伝いしてくれて助かるな」「お友達と仲良くできたね」「おもちゃのかたづけがよくできたね」と具体的にどんなところがいいのかをほめてもらった方がうれしさは増すものです。
それは、自分のことをちゃんとよく見てくれているんだなという安心感や喜びが得られるからです。
また、自分の言動を具体的にほめられると、子どもはその言動をまたしたくなります。
子どもがよい生活習慣と行動を身につけていけるためにも、子どもをよく見て、その言動を具体的にほめることが大切です。
原則4 タイミングよくほめる
子どもにとってほめられてうれしい感じる時にほめることも大切です。
原則として、子どもが何かよいことをしているのを見たら、その場ですぐにほめるといいです。
そうすれば、短い言葉でも説明なしに、印象深く伝わります。
それに、後でほめてあげようと思っていても忘れることも防げます。
そのためには、子どもをいつもよく見て、子どもの細かい変化を見逃さないことが大切です。
そして、よい変化があったら、すかさずその場でほめるのです。
「いいね」「よくできたね」「お母さん、うれしい」
ほめ言葉を口ぐせになるくらいに、毎日、たくさんほめる親となりたいものです。
原則5 結果だけでなくプロセスもほめる
失敗したときは、子どもはその時の結果だけ見て落ち込んでしまいます。
努力しても結果が思わしくないということは誰にでもあるのです
なのに、親もその結果(数字)だけ見て、「全然がんばってないじゃないの」「努力が足らない」など叱るのと、子どもは「もう、やる気なくなるなあ」と気持ちが沈んでしまいます。「自分はダメなんだ」と自信を失います。
でも、結果だけで判断せずに、そのプロセス、その取り組み方やがんばった点を見つけると、子どもは違った受けとめ方をするものです。
親「昨日は、テレビも見ずに試験勉強してたね。感心したよ」
子「うん、でも、慌てて詰め込んでもダメだね。これからはもっと前から準備するようにするよ」
親「今日の試合は負けたけど、いいパスがたくさん出せたね」
子「パスの練習はだいぶしてきたんだよ。これからは、もっとディフェンスの練習もするよ」
親が自分をよく見てくれていて、その取り組みのよかったこともほめてあげると、子どもはまた自分の目標に向かって意欲をもって努力できるようになるものなのです。
原則6 続けさせたいことをほめつづける
子どもを変えるには、段階があります。
親の一言で、子どもが変わるのはまれです。
それでも、親の一言がきっかけで、気持ちが変わり、行動が変わることがあります。
同じような行動を繰り返すことで、それが習慣化され、徳になります。
そして、よい徳をもっている人は、運命も人生も変わってくるのです。
子どもをほめるときには、続けさせたいことをほめましょう。
行いは続けることによって、習慣となり、その人の徳になります。
行いを続けさせるためには、ほめ続けることが必要です。
毎日続けてほしいのなら、毎日ほめましょう。
親がほめ続けると、子どもの継続的な行動になり、絶え間ないエネルギーとなるのです。
原則7 愛情をもってほめる
言葉は使う人の心のあり方によって、相手への伝わり方が違います。
心のあり方は、顔の表情や声の出し方などになって表れ、子どもでも敏感に感じ取ります。
どんなに美辞麗句のほめ言葉でも、無表情でぶっきらぼうに並べたててられば、それが本心でないことが感じ取られ、うれしさは湧いてこないものです。
でも、たとえ「がんばったね」「よくやってるね」というシンプルな言葉でも、親が子どもの努力や成長を喜んで心から発する言葉であれば、それは親の表情にもあらわれ、十分に子どもに伝わります。
ときには「大好きだよ」「わたしの宝ものだよ」と愛情をストレートに表わすことも大切です。
たとえほんの些細なことであっても、子どものよさを親が喜び、愛情をもって心からほめることで、子どもを喜ばせ、自信をもたせ、やる気にさせるのです。
出典:拙著『子どもの「いいところ」を伸ばすほめ言葉ブック』(PHP研究所)を少し修正