エッセイなど

通知表が最低だった「問題児」が立派な大人になって書いた本

療育関係の本を何冊か読んで勉強中です。

今日これまでて一番面白い本に出会い、一気読み。その勢いで、皆様にもご紹介したいと思いました。

山内 康彦著『通知表がオール”もう少し”の学校心理士の考える 「特別支援教育」って何? 』(WAVE出版)です。

著者は自閉症でADHD、学校で一番の問題児と言われた子どもでした。が、現在は特別支援教育の専門家として活躍中。この本は、ほぼ100%著者自身の体験や学びに基いています。

学者さんの退屈な本を読むのが苦手な私にも非常に面白く、かつ役に立ちました。

内容は、「特別支援教育」に限らず、一般の学校教育や家庭教育にも適応でき、役立ちます。

本当に問題児だった著者

本の表紙には、著者の小学2年の通知表の写真が掲載されているのですが、本当に、オール「もう少し」(3段階評価では1、つまりオール1)だったんです。

しかも学校でよくウンコを漏らしました。片づけができる部屋の中はいつもグチャグチャ。学校では忘れ物チャンピオンとして罰を受けていたり、マス目の中に文字を書くことができない、他にもいろいろありますが、「学校一の問題児」と言われた子どもでした。

そんな子どもが国立大学の大学院まで進み、教師になり、経営者にもなって、社会で活躍できるようになったのは、なぜか?

そのわけが具体的にていねいに書いてあります。

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「問題児」を受け入れてくれた大人

そのわけは、「問題児」だった著者を受け入れてくれた大人(両親・先生・叔父さん、近所の人たち)の存在(教育)があったからです。

たとえば、ウンコを漏らせば、みんなからいじめられるのが普通ですが、それをくい止めたのは両親のおかげです。

ある時、父親が「友達をつくる秘密を教えてあげる」と言って、手品やって見せてくれました。友達をつくるには、その手品を朝の会の3分間スピーチのときにやって、手品のタネを知りたがる子に「ぼくの家に遊びに来たら教えてあげる」と言えばいいのだと。

この作戦は見事成功。友達が何人も家にやってきました。その友達に、お母さんが手作りのお菓子をふるまってもてなしました。それをずっと繰り返したのですね。

おかげで、友達はどんどん増えていき、その後も著者は手品を続け、860個以上の手品ができるようになったのです。(だから両親に本当に感謝)

というような具体的なエピソードが詳しく書かれていて面白いです。

本の目次

『「特別支援教育」って何?』(WAVE出版)』

第1章 あだ名は「山ウンチ!」――学校一番の“問題児”が困難を乗り越えるまで
 「こんな問題児見たことない」と言われた幼少期
 「苦手なことを克服する」より「好きなこと、得意なことを伸ばす」
 こんな僕を受け入れてくれた大人や先生に感謝
 大人の姿を見て子どもは育つ

第2章 なぜできないのか? どうしたらできるようになるのか?
 一番困っているのは「子どもたち本人」
 各種検査を活用する
 日本理化学工業という会社
 叱るより褒めることの効果
 「位置付け」「価値付け」「方向付け」という三つの褒め方
 「手をかける」「目をかける」「気をくばる」という三段階の支援
 できることからの出発
 叱るときのポイントとは?
 子どもたちに進んでやらせる方法

第3章 学校との連携のあり方と具体的な支援のあり方
 「言われてからやる」のが公務員
 医師や心理の専門家の意見書を活用する
 支援計画に記録や今後の目標を明記する必要性
 「カレーライス理論」
 専門性はなくても熱意のある先生はたくさんいる
 子どもを指導すべきときと受け入れるときの使い分け
 子どもたちに寄りそった指導の事例

著者紹介

山内 康彦(やまうち やすひこ)

1968年岐阜県生まれ。(株)サーバント取締役、日本教育保健学会前理事、(一社)障がい児成長支援協会協会長、学校心理士。岐阜大学教育学部卒業。
専門は特別支援と保健体育。岐阜県の教員として20年勤務。義務教育9学年すべての学年を担任し、継続的な支援の必要性を痛感する。
その後、教育委員会で教育課長補佐となり、学校教育を中心に就学指導委員会や放課後子ども教室を担当。自身の専門性を高めるため、岐阜大学大学院教育学研究科に入学。修了後は特別支援学校の専門職修士となり、学校心理士とガイダンスカウンセラーの資格も取得。
私立小学校勤務を経て、現在の(一社)障がい児成長支援協会を立ち上げ、協会長となる。年間50回を超える講演会を開催しながら、障がい者福祉施設の職員研修・保護者相談会を行っている。岐阜大学非常勤講師。中部学院大学非常勤講師。