時々、絵本の読み聞かせをさせていただいています。
絵本の読み聞かせをすると、子どもたちが落ちつきます。そして楽しんで聞いてくれるのです。
読み聞かせの教育効果については、本にも書いてきました。
「読み聞かせ」の効果
1.子どもに、聞く力や集中力が育ちます。
2.感動をさそう物語なら、情感豊かな子どもに育ちます。
3.文字や本に興味を持ち、読書好きの子どもにもなります。
もちろん、それだけではありません。
松居直さんから教えてもらったこと
児童文学者の松居直さん(福音館書店の編集長・社長を経て相談役)から学んだことがあります。
最初聞いて驚いたのは、福音館書店の編集の第1の方針は、「絵本は子どもに読ませるものではない」ということです。
実は、「絵本は大人が子どもに読んで聞かせるもの」だということです。
なぜ、松居さんが子どもの本の編集に携わるようになったか。
それは松居さんが幼児の頃、母親との楽しい思い出があるからだそうです。
松居さんは6人兄弟の5番目で、お母さんは朝から晩まで忙しく働いていました。そんなお母さんが夜寝る前に、ふとんの中で絵本を読んでくれたのです。
それは、幼い彼にとって、お母さんと共にいることのできる、お母さんの愛情を感じることのできる、一番楽しい時間だったのです。
でも、先に寝るのはいつもお母さんだったそうですが・・・(笑)
この貴重な楽しい子どもの頃の経験が、松居さんの出版の仕事の原点であり、原動力となってきたのですね。
読み聞かせをしているとき、親子はともにいる。
同じ喜びを共有する、分かち合うことができる。
これが大事なのだと・・・・
読み聞かせは、親(大人)と子どもが愛情を共有し分かち合う機会・時間・場となりうるということなのです。
子どもに本を読んであげる原則
松居さんが言われていました。
子どもに本を読んであげる原則があると。
・子どもが読んでほしい本を読む。
・子どもが飽きるまで繰り返し読む。毎日毎日、半年続けてもいい。
歌人の俵万智さんは、ある絵本が大好きで、3歳のとき、1年間その同じ絵本を読んでもらい、一言一句、間違えないで覚えるようになったそうです。
それでも、お母さんに読んでもらいたかった。
この絵本は、『三びきのやぎのがらがらどん』(福音館書店)。俵万智著『かーかん、はあい 子どもと本と私』(朝日新聞出版)に出ています。
俵万智さんは、自分が息子さんに読み聞かせる立場になって、自分のお母さんがどれほど大変だったか、身に染みてわかったそうです。(笑)
人間にとって、大切なものの多くは目に見えません。
心も、時間も、大切なもの・・・。
言葉もその響きも、目に見えない大切なものです。
目に見えないものをどれだけ感じることができるか、それが感性の豊かさでしょう。
子どもは、言葉を食べます。血肉とします。
そして、身についたものが自然と口から出るようになります。
そうして、言葉による喜びの体験を得ることができます。
子どもの生きる力となり、この喜びを与えてくれた人を決して忘れないでしょう。
言葉の大切さ
さて、私たち大人も、言葉を食べて成長していきます。
自分に血肉となっている言葉で、自分の思いや考えを伝え、人とコミュニケーションを図れるようになっていきます。
人を慰めたり、励ましたりするのも、言葉。
人を傷つけ、貶めるのも、言葉。
言葉一つで、人は美しくもなり、醜くもなります。
言葉一つで、人は元気にもなります、落ち込みもします。
一つの実話を思い出しました。
ある母親は、坂村真民さんの詩「念ずれば花ひらく」が好きで、よく子どもに読んで聞かせていました。
ところが、貧しい生活苦から将来への希望をなくし、ある日、苦悩に耐えられず、子どもをつれて死のうとしたのです。
まさにその時、子どもが、覚えて諳んじていた「念ずれば花ひらく」という詩の一節を独り言のようにつぶやいたのだそうです。
「念ずれば花ひらく」「念ずれば花ひらく」
母親は、ハッとして子どものあどけない顔を見つめ、抱きしめ、泣きぬれました。
そして、死ぬことを思いとどまったのです。
良い言葉を日常的に使う
子どもの言葉からの影響力は、大人以上です。言葉の吸収力も大人以上です。
どんどん新しい言葉を覚えて吸収していきます。
読み聞かせをして、すぐれた物語を楽しみながら、言葉への感性を養っていくことは実に有効です。
それに、子どもが良い言葉にふれ、言葉を使えるようにしたいものでね。
たとえば、
「はい」「ありがとう」「ごめんなさい」
こういう言葉を当たり前のように言える子は、必ず良くなります。
学校でも、幼児教室でも、放課後等デイサービスでも確信してきました。
そのためには、わたしたちまわりの大人が日常生活の中で、良い言葉を使うことが大切と考えています。