『幸せな王子』(オスカー・ワイルド作)
この話は子どもの頃に読んで、いまでも忘れられません。
読んだ人は、たいてい感動するではのではないでしょうか。
犠牲を伴った真実の愛や友情に心震えるのではないでしょうか。
ご存じだとは思いますが、ストーリーをご紹介します。
『幸せな王子』のあらすじ
ある街の柱の上に幸福な王子の像が立っていました。
とても美しい王子は街の人々の自慢でした。
南の国へ向かう途中、旅に疲れたツバメが、王子の足元で寝ようとすると、突然上から雨水が落ちてきました。
それは、王子の涙でした。
王子はこの場所から見える不幸な人々に自分の宝石をあげてきて欲しいとツバメに泣きながら頼みます。
ツバメは言われた通り、病気の子供がいる貧しい母親や飢えた若い画家と幼いマッチ売りの少女に王子の目のサファイアなど持っていきます。
「ぼくは、目が見えなくなった。君は街を飛んで、色々な話を聞かせてくれないかい」
つばめの話を聞き、まだたくさんの不幸な人々がいるのを知ると、自分の体の金箔を剥がし分け与えてほしいと頼みます。
やがて冬が訪れ、雪が降りはじめました。
王子は次第にみすぼらしい姿になり、ツバメも弱っていきました。
王子はツバメのぬくもりを感じながら言いました。
「今まで、本当にありがとう。でも、ごめんね。君は楽しみしていた南の国に、とうとう行けなくなったんだね」
「いいんです。ぼくは、あなたが本当に好きでしたから」
そう言うと、ツバメは最後の力を振り絞って飛び上がり、王子にキスをして足元で力尽きます。
その瞬間、王子の鉛の心臓は音を立て二つに割れてしまうのです。
「あんな汚いものを除けてしまえ」
偉い人の命令で、溶鉱炉の入れて溶けなかった王子の心臓とつばめの亡骸はゴミとして捨てられました。
それをご覧になっていた神様は、天使たちに命じました。
「あの町でもっとも尊いものを2つ持ってきなさい」
天使たちはごみ捨て場から「鉛の心臓」と「つばめの亡骸」を持ち、天に向かいました。
愛に包まれる
そんなお話です。
「幸せの王子」という名前は、王子が生きている間につけられたものでした。
でも、王子が本当に幸せを感じていたのは、銅像になった以後だったということが、この物語を読めばわかります。
王子は自分の体が次第にボロボロになっていても、悔いはなかったはずです。
自分のもっているものを分け与えることで、貧しい人や病気の人たちを助けられたからです。
つばめも、ついに南の暖かい国には行けませんでしたが、やりがいを感じていたはずと思います。
大好きな王子のために、その尊い願いを叶えるために役に立ったのですから。
ふたりは、幸せでした。
この世で、自分の望むように、愛をもって、愛のために、自分の命を生き抜くことができたのですから。
さらに、この物語のラストで、神様がふたりの行ないに報いる場面も描かれているのもいいなあと思います。
仮にこの世で、誰からも顧みられないように思えるときも、きっと大きな愛で包み込みこまれているのです。
愛をもって、愛のために生きる人は、愛に包まれるのだと信じています。
出典:『幸せな王子』(オスカー・ワイルド)