この記事は、2018年1月号の「カトリック生活」という月刊誌に書いたものです。
今日、始める!
小さなことから、始める!
ということは、特別に新年だから、というわけではないでしょう。
常日頃から心がけていきたいと思っていることです。
できれば、
新しいことを始める(チャレンジする)!
ということも大切に思っています。
新しいことにチャレンジする
はじめることさえ 忘れなければ、人は、いつまでも若さを保てます。
医師 日野原重明
新年を迎えるにあたって、抱負や夢をもつ人が多いと思います。年が改まると、心機一転「よし、やるぞ!」という気持ちになれますね。そういう気持ちをずっと待てる人は、どんなに年をとっても若々しく溌剌としています。
年齢に関係なく、「もう、○○歳だから」「もう、ダメだ」と言っていると、気持ちも行動も消極的になってしまいます。
そうではなく、「まだ、○○歳だから」
「まだ、まだできる!」と言っていると、気持ちも行動も積極的になっていきます。
新しいことにチャレンジできるようにもなるのです。
冒頭の言葉の日野原先生は、昨年百五歳で亡くなるまで、ご存じのように、多方面で活躍されていた医師でした。日野原先生が百三歳のときに、講演を聴いたことがあります。実に若々しかったです。退場前の結びの言葉に、聴衆は笑みを浮かべ、大拍手を送りました。
「これからも前進、前進、前進です!」
これは、ご自分を鼓舞する言葉であり、私たち百歳以下の若者へのエールでもあったからです。
「今日」「今から」でチャレンジする
始まるのを待ってはいけない。自分で何かやるからこそ何かが起こるのだ。
登山家・冒険家 植村直己
高い山への登頂も、最初の一歩があってこそ達成できます。ただ、目指すものが高く大きいと、最初の一歩がなかなか踏み出せないものですね。
「いつかやろう」と思っていても、その「いつか」はやってきません。「今は忙しいから、そのうち暇な時間ができたら」と思っていても、暇な時間などいつまで待ってもできません。
自分で何かをするための合言葉は、「今日」「今から」です。
いったん動き出したら慣性の法則で、エネルギーは少なくてすみます。電車や飛行機などと同じです。スタートに最もエネルギーを使いますが、やってみれば、案じていたほど難しくはないものです。
始めることによって何かが変わる
やってみなければ、神さまがどんな大きな力で助けてくださるか、誰にもわからないのです。 作家 ストウ夫人
ストウ夫人は奴隷制度の廃止を訴えるために、奴隷たちの悲惨な状況を伝えようと、『アンクル・トムの小屋』を書いた人です。
本は、大ベストセラーになり、多くの人に奴隷制度について深く考える機会をあたえました。
その九年後、奴隷制度に賛成する南部と反対する北部の間で南北戦争が起こります。ストウ夫人にとっては、まったく思いもよらぬ大きな影響でした。
後に、リンカーン大統領がストウ夫人に会ったとき、「あなたのような小さな方が、あの大きな戦いをひきおこしたのですね」と語ったように、ストウ夫人の本は、奴隷解放を成し遂げるきっかけとなったのです。
私たちも行動すれば、何かが変わります。外に出て歩き出せば、景色が変わるように、自分が動くことでまわりの状況は変わります。美しい景色を見て爽快になるように、自分の内面も変わっていきます。神さまの助けを得て、期待以上の結果になることもあるでしょう。
小さなことから始める
小さいことを積み重ねるのが、とんでもないところへ行くただひとつの道だと思っています。 大リーガー イチロー
この人生、私たちはどこに行こうとしているのでしょうか。
この世での成功や幸福はさておき、私たちカトリック信者が目指しているのは、
この世では決し得られない永遠の幸福でしょう。つまり、私たちは天国への道を歩んでいます。
天国は、とんでもなくはるか遠くにあるのではなく、私たちの歩んでいる道につながっています。イエスさまが教えてくださったこの道を一歩一歩、歩んでいけば着実に達するのです。
でも、生身の人間ですから、途中、路傍の石や木の根っこにつまずいたり、道に迷ったりすることもあるでしょう。
であれば、また立ち上がり、元の道に戻り、歩き始めればいいのです。
夢は大きく、歩みは小さな一歩から。
たとえば、祈りを一つ唱えることから。聖書を一章読むことから。霊的読書を始めることから。教会に聖体訪問のために立ち寄ることから。ロザリオを一環祈ることから。早起きして、念祷を始めることから。そんな小さなことから、神さまとの対話が始まり、神さまに立ち戻り、いっそう親しくなれます。神さまの愛が心からあふれ出れば、言葉や笑顔や行いを通して、家族や友人、まわりの人にも伝わっていくでしょう。
今日、小さなことから始めること。何度でも始めること。日々の小さな歩みは、必ず大きな幸福へとつながっていきます。
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『カトリック生活』2018年1月号 連載エッセー「いのり・ひかり・みのり」第74回 拙稿「今日、小さなことから!」より