わしは、人類のために、
社会の幸福のために
働くべきだったんだ。
チャールズ・ディケンズ
(1812~70)
イギリスの小説家
亡霊になった商売仲間の言葉
もうすぐクリスマスだという頃、この記事を書いています。
街では、クリスマスを迎える準備が進んでいますよ。
家庭で、仲間うちで、今年はどんなクリスマス会にしようかと思案中の方もいらっしゃるでしょう。
それなら、クリスマスを扱った名作にふれるというのはいかがでしょう。
文豪チャールズ・ディケンズの『クリスマス・キャロル』は、映画にもなり、家庭でも楽しめます。
これは、仕事熱心だが欲張りなスクールジーが、クリスマスの夜に次々とおくられてきた霊によって、人間愛に目覚める楽しい物語です。
まずは、昔の商売仲間のマーレーが亡霊として現われます。
体に重そうな鎖を巻きつけ、あえぎながら、スクールジーにこう語るのです。
「なぜ、こんな鎖を引きずっているかって?
ああ、この鎖はな、俺がこの地上で求めていたのものだ。
今のおまえには見えまいが、もっと長い鎖がおまえには巻きついているぞ」
おびえるスクールジーに、マーレーはさらにこう諭します。
「わしは、人類のために、社会の幸福のために働くべきだったんだ。
人に尽くし、やさしい心をもち、人のあやまちを許し、進んで人を助けるべきだったんだ。
わしのなすべきことを広い海にたとれば、わしの金もうけなんか一滴のしずくにすぎなかったよ」
過去・現在・未来を示す亡霊たち
もちろん、これだけでスクールジーが心変わりするのではありません。
その後、一晩のうちに、スクール-ジーのもとへ自分の過去・現在・未来を示す亡霊がやってきます。
貧しくても純粋だった少年時代。
人を愛し、人に愛されていた青年時代。
そして金の虜となった今の自分。
スクール-ジーは、そういう自分の姿を客観的に見ることで、泣き、笑い、叫び、そして悔やみます。
そして最後には、未来の亡霊が無言のうちに示した自分の姿に打ちのめされ、改心をとげた彼は、かつて味わったことのない光り輝く朝を迎えるのです。
自分の心が変わっただけで、世界が違っていました。
いまや彼の見るものは、すべて美しく輝き、彼にほほえみかけているようでした。
彼は街に飛び出して、歓喜の叫び声をあげます。
「メリー、クリスマス!メリー・クリスマス!
クリスマス、おめでとう!
ありがとう!ありがとう!ありがとう!
みんな、ありがとう!・・・・」