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私にとって最高のクリスマス映画

クリスマスが近づいてきました。

街中で、クリスマスソングが聞かれるようになりましたし、クリスマス風のイルミネーションも見られるようになってきました。

なんとなく楽しくウキウキした気分になれます。

古今東西、テーマにした歌・曲・絵画・本などは非常に多いです。

映画もたくさんあります。

その中で、今回は不朽の名作と言われる古い映画をご紹介します。

「素晴らしき哉、人生!」

 もしご存じなければと思い、ご紹介します。フランク・キャプラ監督作の映画「素晴らしき哉、人生!(It’s a Wonderful Life)」です。

 一九四六年制作の白黒映ですが、クリスマスにはぴったりの感動の名画です。

 アメリカ映画協会(AFI)が選ぶ「感動の映画ベスト100」では1位に、同協会の「アメリカ映画ベスト100」では11位にランクインされているとのこと。不朽の名作として毎年末にテレビ放映され、若い世代からも再評価されているそうです。

 私は五回は観て、あらすじを知っているのに感動します。でも知らないで観たい方は、この先は要注意です。

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あらすじ

 クリスマスイブ、わき返る田舎町で、ジョージ(ジェームズ・スチュアート)は、絶望して自殺をしようとしていました。

 妻のメアリー(ドナ・リード)や子どもたちが、「ジョージを救って下さい」と懸命の祈りを捧げています。

 そんなジョージを救うべく、翼を持たない二級天使が神様から派遣されます。

 さて、ジョージとは、どんな人物なのでしょう?

 場面は一転して、ジョージの半生を紹介していきます。

 彼は、善良ですが、何かと幸運に見放されて、夢の実現もかなわない人でした。

 少年時代、ジョージは氷が割れて水に落ちた弟を救うべく、真っ先に飛び込み、左耳の聴覚を失いました。

 耳が不自由なので、様々な失敗はありますが、バイト先の店主の窮地を救ったこともありました。薬屋の店主が息子の病死に落胆し、間違って劇薬を売りそうになったのを未然に防いだのです。

 高校時代。彼には小さな町を出て世界中を回り、大学を出て、都市計画に関わる大金持ちの建築家になる夢がありました。しかし、突然父に死なれ、町の悪徳資産家ポッターに対して正義を守るために、父の経営していた住宅金融会社を継がねばならなくなります。

 ゆくゆくは、その仕事は、大学に進学した弟に譲るつもりでした。しかし、弟は大工場主の娘と結婚し、その工場で働くことになります。ジョージは弟を祝福し、長年の夢を断念しました。

 幼馴染のメアリーと結婚して、新婚旅行に旅立とうとすると、経済恐慌で取り付け騒ぎが起こり、旅費を全部投げ出して、会社の急場をしのがねばなりませんでした。

 その後もジョージは、悪徳資産家ポッターの圧迫にも堂々と渡り合い、貧しい人々に住宅を与える仕事に精力を注ぎます。いつもまわりの人のために自分の夢を犠牲にして生きてきたジョージですが、妻のメアリーとともに幸福な家庭を築きます。

 ところが、クリスマスイブの朝、ポッターの銀行に預けようとした大金を叔父が紛失してしまうのです。ジョージと叔父は必死に探しまわりますが、大金はポッターの手にあり見つかるはずもありません。

 切羽詰まったジョージは、ポッターに借金を頼みますが、ポッターは横領罪で告発すると言います。

 失意のジョージは、バーで飲んだくれて喧嘩に巻き込まれ、自暴自棄になります。そして、自殺をして保険金を手に入れることを考え、橋の欄干から凍りつく川面に身を投げたのです。そこに老人の姿をした天使が登場し、川の中から助け上げます。

感動のラスト(ネタバレ)

 「自分なんか生まれてこなければ良かった」と嘆くジョージに対し、天使は、「それでは望み通りにしよう」と、ジョージが存在しなかった世界を見せます。

 その世界では、弟は九歳で氷の池で死に、薬屋の店主は子どもを毒殺した罪で二十年間刑務所に繋がれていました。母も自分のことを知らず、叔父は失業して精神病院に入院。さらに、メアリーは愛のない寂しい人生を送っており、町全体は殺伐としたものになっていました。

 自分がいない世界を見て、ジョージは初めて自分の人生の価値に気づきます。「一人の命は大勢の人生に影響し、一人が欠けると世界は一変する」と天使は語ります。

 突然、また元の世界に戻ったジョージは、嬉しさの余り、町中を歓喜しながら駆け回ります。自分がいま生きていること、生きてきたこと、様々な人との関わり、すべてに心の底から感謝しながら。

 家に戻ると、素晴らしい出来事が待っていました。ジョージを愛する町の人々が彼のために次々と集まってきて、皆でカンパをしてくれるのです。集まったお金は失くしたお金を補って余るほど。

「メリー、クリスマス!」

 愛する人々に囲まれ、ジョージは涙ながらに叫びます。

 寄付金の中には、「ジョージよ、友はかけがいのないものだ。翼をありがとう」という天使からのメッセージもありました。「天使は翼をもらうとベルが鳴るのよ」。娘の言葉に、ジョージは幸福をかみしめ、家族や町の人たちと「蛍の光」を合唱します。

最高のクリスマス映画

 この映画は何度観ても、心が温かくなり泣かされます。

 主人公の長年の誠意と善意が町の人々に届き、人と人が思いやりを示し、助け合うことによって報われる、さわやかで熱いラストシーン。不運続きで、「生きていても仕方がない。自分なんか生まれてこなければ良かった」と、自ら命を絶とうとした人への天使に託した神様からの愛と救いのメッセージ。

 ストーリーも結末も知っているのに、もう一度観たくなる映画。そして、他の人にも観てもらいたくなる、私にとって最高のクリスマス映画です。

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『カトリック生活』2020年12号 連載エッセー「いのり・ひかり・みのり」第109回 拙稿「クリスマス名作映画」より

https://lucky.t-nakai.work/2019/12/23/word-116/

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