鎌田 實 著『1%の力』(河出書房新社)が面白かったです。
1%が人生を変えた本当にあった話です。
著者は、『がんばらない』(集英社)などで有名な鎌田 實医師。
「1%には人生を変える力がある」
と鎌田さんは言います。
鎌田さん自身が、1%の力で人生を変えてきた人です。
1%の力が、何かを起こす
鎌田さんは、実の親から捨てられ、拾ってくれた親は貧乏でした。
37歳でパスポートを取得するまで、自分が養子だとは知らなかったそうです。
個人タクシー業を営む父と病弱な母の貧しい家庭で、家ではご飯も食べられないことが多かった。
しかし、鎌田さんは、それを不運だとは思わなかったのです。
つねに、少しずつ少しずつ、可能性を広げることで、幸運を作り出してきました。
何もしないなら、実現の可能性は0。
1%可能性があるなら、ダメ元でやってみる。
少しずつ少しずつ・・・。
1%の力が何かを起こすのです。
いろいろな実話の中には、オー・ヘンリーの短編『最後の一葉』が要約されて挿話されています。
ご存じかと思いますが、こんなあらすじです。
オー・ヘンリー『最後の一葉』
ワシントン・スクエアの西側にある、芸術家が集まる古びたアパートに暮らす画家のジョンジー(ジョアンナ)と同じく画家のスー。
貧しいながら暖かい生活を送っていた中、ある日ジョンジーは重い肺炎を患ってしまう。
スーは、医者から「ジョンジーは生きる気力を失っている。
このままでは彼女が助かる可能性は十のうち一」と告げられる。
心身ともに疲れ切り、人生に半ば投げやりになっていたジョンジーは、窓の外に見える煉瓦の壁を這う、枯れかけた蔦の葉を数え、「あの葉がすべて落ちたら、自分も死ぬ」とスーに言い出すようになる。
彼女たちの階下に住む老画家のベアマンは、口ではいつか傑作を描いてみせると豪語しつつも久しく絵筆を握らず、酒を飲んでは他人を嘲笑う日々を過ごしていた。
ジョンジーが「葉が落ちたら死ぬ」と思い込んでいることを伝え聞いたベアマンは「馬鹿げてる」と罵った。
その夜、一晩中激しい風雨が吹き荒れ、朝には蔦の葉は最後の一枚になっていた。
その次の夜にも激しい風雨が吹きつけるが、しかし翌朝になっても最後の一枚となった葉が壁にとどまっているのを見て、ジョンジーは自分の思いを改め、生きる気力を取り戻す。
最後に残った葉はベアマンが嵐の中、煉瓦の壁に絵筆で精緻に描いたものだった。
ジョンジーは奇跡的に全快を果たすが、冷たい風雨に打たれつつ夜を徹して壁に葉を描いたベアマンは、その2日後に肺炎で亡くなる。
真相を悟ったスーは物語の締めくくりで、あの最後の一葉こそ、ベアマンがいつか描いてみせると言い続けていた傑作であったのだと評する。
1%は誰かのために
老画家ベアマンが、描いた1枚の葉の絵を見て、ジョンジーは、生きる力を得て、奇跡的に病気が治ります。
たった1枚、けれども自分のためでなく、人のために描いた1枚でした。
鎌田さんは、言います。
「1%は誰かのために生きてみてください。個人も社会も幸福にする、小さいけれど、とてつもない力――。愛する人を守り自分の大切な仕事を守るために。」
長野県茅野市のつぶれかけていた諏訪中央病院医師として赴任し、「住民とともに作る地域医療」の最前線に取り組み、茅野市を健康寿命日本一に導いたことも。
チェルノブイリ原子力発電所被曝事故の患者の治療にも協力し、1991年より22年間、ベラルーシ共和国の放射能汚染地帯へ97回の医師団を派遣し、約14億円の医薬品を支援したことも。
鎌田さんに言わせば、1%の取り組みから始まったそうです。
私たちも、100%は、とてもできそうもないけれど、1%ならできそうです。
少しだけ。少しずつ。少しずつ。
優しい言葉を1つ言えれば、1%
穏やかな笑顔であいさつできれば、1%
5分間だけでも人のために時間を使えば、1%
それは積み重なり、誰かを幸せにする力になるでしょう。
小さなことだけど、大きなことにつながっていく。
大きなことはみな、小さなことからうまれていく。
たとえ、大きなことにならなくても、1%の心遣いや優しさ、それ自体に価値があると私は思います。