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新聞コラム6『ファミリ-』「愛を学ぶ所はどこか」

長崎市で教師だった頃、地元の長崎新聞のコラム「うず潮」に月に1度、3年間ほどエッセーを連載させていただいていました。

この得難い仕事を通して、私は文章を書くことにだんだん魅せられていきます。

当時は思いもよらなかったのですが、このエッセー連載を機に、教師をやめて、文章を書く仕事をすることになります。

その後、幸運にも本を何十冊も出版していただけるようになったのですが、ご紹介する新聞記事は、その原石となったのです。

トップの写真は、恵みの丘原爆ホ-ム(長崎市)。マザー・テレサやヨハネ・パウロ二世教皇も慰問のために訪れました。(私も学校の子どもたちを連れて劇を披露しに行きました)

『ファミリ-』  

 良い本を見つけた。

 クラスの子供にも要求する手前、勉強のために年間百冊は本を読むが、自分には面白く役立つ本でも、人様に薦められる本にはなかなか出会えないものだ。ご紹介する『ファミリ-』は、その数少ない本の一つである。

 著者は、世界で千二百万部のベストセラ-となり、ビジネス書としては史上最高の売り上げを更新中の『7つの習慣』を書いたスティ-ブン・R・コウィ-博士である。

 会社・家庭・個人のすべてに渡る成功の原則を説く『7つの習慣』を家族生活に当てはめ、さらにくわしく実践的に著わしているのが『ファミリ-』である。

 コウィ-氏は超多忙な世界的経営コンサルタントでありながら、九人の子供を育て、何よりも家族を大切にしてきた。「家族の成功なくして、人生の本当の成功などありえない」と彼は言う。

 本の中には多くの成功例失敗例のエピソ-ドが出てくるが、それらが面白く、成功の原則をよりわかりやすいものにしている。

 子供とのコミニュケ-ションがうまくいかなかった親が自分の方から対応を変えたら、子供が涙ながらに自分のことを話し出し子供自身も変わっていった話。妻に愛情が持てなくなり悩んでいる夫に、愛は感情ではなく、行いであり理解であり犠牲でもあると気づかせる話など。毎日、何十人の子供たちや保護者と接する立場からしても大変役に立ち有り難かった。  

 より良い家族生活、子育てを願う世のお父さん方には特にお薦めできる。悪化する現代の風潮に負けず家族を守っていきたい。多忙の身でも家族との有意義な時間を作りたい。家庭に問題が生じても、むしろその問題を通して「家族の絆」を強めていきたい。そう願う人には、益するものが多いだろう。 

 ちなみに、上下二巻で七百ペ-ジ以上はある。長いのは苦手だと言う人は、自分に役立ちそうなところだけでも拾い読みしてはどうだろうか。           

 良書はきっと人を幸福にする。

   1999年6月26 日「長崎新聞」

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愛を学ぶ所はどこか

 日本の教育の一体どこに問題の本質があるのか、私達は皆、ほぼわかっている。

  わかっていながら、流されてしまっている。この流れの先にあるものが、経済の繁栄、そして一人ひとりの豊かな暮らしである。

 この豊かな暮らしを約束するものが、人間性ではなく、物であり数字である。他人より多くの物や高い数字を求め競い、子供たちはストレスをため疲れ果て、他者も自分さえも大切にできないでいる。 

  「いじめ」「不登校」「学級崩壊」 「援助交際」「自殺」「殺傷事件」など子供たちにかかわる問題があまりにも多い。しかも、事件を起こすのは「普通の子」だそうである。

  日本人は何かがおかしくなりつつある。それを私達は、子供たちの問題行動という悲痛な叫びによって思い知ることになった。

 十数年前、故マザ-・テレサが長崎市にある恵みの丘原爆ホ-ムを慰問されたとき言われた。

  「今、地球で飢えたところが二つあります。アフリカと日本です。日本の飢えは精神の飢えです」

   物がどれだけ豊かになろうと、人は真に満ち足りることはない。精神の飢えは、精神でしか満たせない。

 先日、映画監督の山田洋次さんと作家の三浦綾子さんの対談録を読んだ。その中で山田監督が「寅さん映画には善人しか出てこないと言われますけど、地域社会はこうあってほしいというあこがれなんですよ」と話された。

  直後の三浦さんの言葉は、お二人の願いと生きる姿勢が合致したものに思え、印象深い。

  「学校は愛を学ぶ所、と言いましたけど、人間が住むところは全部、愛を学ぶ所なんですね」。

   お二人の作品に接する度に、私達が泣いたり笑ったり心が温かくなったりするのは、このような考えが創作にも生かされているからであろう。

 ところで、私達の実生活はどうだろうか。私達の住む家庭や学校や地域社会が、子供たちにとって、どれだけ愛を学ぶ所になっているのだろうか。

  かえりみて反省することがやはり多い。  

       1999年7月29日「長崎新聞」

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