どんな仕事でも、相手がある限りクレームはつきものですね。
クレイマー、怒っている人にはどう対処していけばいいのでしょうか?
日本一クレーマーが多いと言われる新宿歌舞伎町で、クレームをものともせずに、逆にクレーマーをファンにしていった凄腕のホテル支配人がいました。
その凄腕支配人のお話です。
怒鳴られたらどうするか
「怒鳴られたら、やさしさを一つでも多く返すんです」
三輪 康子(大手ホテルチェーン新宿歌舞伎町店支配人)
その支配人、三輪康子さんのお話です。
三輪さんの着任当初、ホテルはひどい状態でした。
ロビーにはヤクザがたむろし、最上階はヤクザの定宿、汚水槽には覚醒剤の注射器が浮かび、従業員はだれもがやめたいと思っていました。
警察の対応も冷ややかでした。
ふつうなら、こんなホテルの責任者というだけで、気が滅入ってしまうでしょう。
しかし、三輪さんは違いました。
三輪さんは、この状況をなんとか改善しようとしたのです。
まず、ヤクザを泊めない、クレーマーの要求には粘り強い交渉でNOを言い続ける、ということに決めました。
そのため、宿泊を断られ怒ったヤクザから、日本刀を振りかざした脅されたこともあります。
しかし、三輪さんは逃げるどころか、逆に一歩前に踏み出し、「お客様に、私は殺せません」と迫ったそうです。
その態度にひるんだのは、ヤクザのほうでした。
エレベーター前の宿泊客から「酔客がうるさい」と苦情を言われても、
満室のため部屋交換や値引きには、一切応じませんでした。
その代わり、自分が一晩中エレベーターの前に立って酔客に「お静かに」と注意することを約束し、不眠でその約束を果たしました。
約束した泊り客も、結局、ほとんど寝ないで、三輪さんが約束を守るか、こっそり見張っていたそうです。(笑)
そのうち、ヤクザは仁義を切ってホテルに近寄らなくなり、悪質なクレーマーも舌を巻いて、三輪さんのファンになりました。
その結果、日本一のクレーマー地帯で、有名ホテルグループ売上日本1を達成!
2010年度MVP賞受賞!
警察からも表彰されました。
三輪さんは言います。
「神様は乗り越えられる試練しか与えない」
「人を恨んでは前には進めない」
「義理と人情、笑顔と愛嬌」(笑)
父から学んだ「人を信じる」大切さ
それにしても、三輪さんは、どうして、そこまで強くなれるのでしょう。
ご著書によると、郷里、青森の八戸市で開業医をされていたお父さんの影響だそうです。
と言っても、お父さんは、怒鳴ることも、声を荒上げることもない優しい人でした。
しかし、貧しい人や困っている人のために、金銭を度外視して、尽くした人だったお医者さんだったそうです。
そんな尊敬するお父さんの背中を見ながら、
「人を信じること」
の大切さを彼女は教えられます。
だから
「怒っている人に怒り返してはいけない。怒っている人には、余計やさしい言葉でお返ししなさい」と。
お父さんのこの言葉が、彼女の教訓となったのです。
ヤクザを相手にする新宿歌舞伎町ほどヒドクはありませんが、教育現場にもクレーマーはいますので、私にも経験があります。
こちらが正しいと思って高圧的に対処すると失敗します。
怒り返せば、火に油を注ぐようなもので、余計に怒りの嵐が吹き荒れます。
どれだけ自分が正しいと思っても、「怒っている人に怒り返してはいけない」のは本当にその通りなのです。
相手の怒りを静めるには、何よりも理解と愛情が必要。
毅然とした態度で、かつやさしさをもって対応するといいのですね。
怒っている人は、自分は正しい。
だのに、不当な扱いを受けたと思っているものです。
ですから、
「怒っている人に怒り返してはいけない。怒っている人には、余計やさしい言葉でお返ししなさい」
というのは、道理にかなった効果的な処方なのです。
怒っている人には、やさしさで包む方が、その人の心を落ちつかせます。
理解され、愛情をもらった人は、変わっていきます。
だんだんと怒りは静まってきます。
怒りの嵐が去り、心が落ち着けば、まっとうな話が通じるようになってきます。
怒っている人に、まず理解と愛情を示す。 (^.^)
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【出典】三輪康子著『日本一のクレーマー地帯で働く日本一の支配人―
怒鳴られたら、やさしさを一つでも多く返すんです!』