誰でも仕事や人間関係がうまくいかなると、辛くなったり、イライラしたり、怒りがこみあげてくるものですね。
イライラや怒りは、人間関係を悪くし、心身の健康を害し、仕事や人生にも悪影響を与えるマイナスの感情や行為です。
このマイナス感情を抑えコントロールする習慣をご紹介するのが、本記事の目的です。
前回の記事は、「怒りの感情はコントロールできる」でした。
今日、あなたが穏やかな気持ちで過ごすことができることを願ってお届けします。
自分のなかにある怒りの根に気づく
怒りは「問題発生のセンサー」のようなものですが、実は問題が外だけにあるのではなく、怒る人の中に起因することもあります。
身近な人でよく怒る人を思い浮かべてみてください。
その人は、普通なら誰も怒らない、ささいなことですぐに怒るでしょう。
たとえばある上司は部下が自分の思い通りに動かなければ、大声で怒鳴りつけます。
一言で済むところを何分間、下手すれば何十分間も怒鳴りつけます。
怒られているほうは、たまったものではありません。
怒りは被害意識から生じると言いましたが、この人はむしろ加害者です。
なぜ、このようになるのでしょうか、その思考を2つのケースで考えてみましょう。
ケース1)部下が自分の思い通りに動かない→命令のとおりできない→(自分を軽視しているのか)→(けしからん!自分は上司なのに)と怒る。
あるいはこんな例もあるでしょう。
ケース2)生徒(子ども)が思い通り動かない→指示どおりできない、しない→(何度言ったらわかるのか)→(ムカつく!自分は頑張ってやっているのに)と怒る。
これらは、相手が自分の思い通りにならないことで、自分の言動や自分の存在が否定されたように思い、怒りがこみあげてくるのです。
このようなケースは、日常的に多いと思います。
これは、怒っているほう(上司・教師・親)も怒られているほう(部下・生徒・子ども)の両方にとって不幸です。
部下や生徒、子どもは社会的には弱者であり、ゆえに誰かの指導を必要とするのですが、すべて上司、教師、親の意思のままになるわけではありません。
問題は、その怒りっぽい人の側にもあるのです。
謙虚になると怒りが消えていく
人間には誰ででも怒りの根っことなるものがあります。
それは、エゴイズムからくる高慢さです。
怒る人は、「自分は正しい。間違っていない」と思っています。
「間違っているのは相手だ、悪いのは相手だ」と考えます。
しかし、実際は、怒っている人が間違っていることは多々あるのです。
ケース3)上司の指示が的を外れていて、仕事がうまくいっていないのに、上司はそれを認めないで、部下に責任があると部下を怒鳴る。
ケース4)教師が授業準備をよくしないで、わかりにくい授業をしているのに、生徒の成績が悪ければ、生徒の勉強不足だと生徒を怒る。
以上のようなケースは、相手だけが悪い、間違っていると思う高慢さから怒りが生まれています。
人は高慢になると、目が曇り、正しい判断を誤ります。自分を完璧な人間、いつも正しいと思う高慢さは、怒りっぽさの原因になっているのです。
このような怒りの根っこを取り除くには、どうすればよいのでしょうか。
根っこごとスッポリとひっこぬいてしまいたいところですが、それはできません。
もともと人間はそういう本性をもったものなのです。
高慢に陥らない、怒りっぽくならないようにするには、謙虚になることです。
すぐにはなれないにしても、「謙虚になりたい」と願うのです。
謙虚は高慢の反対の徳です。謙虚であれば、自分の間違いを素直に認められます。
自分も間違うことはよくありうるし、お互い様だなあという思いがあれば、他人の不完全さを見ても、怒りはあまり湧いてこなくなります。
逆に、他人の弱さや欠点を見て慈悲の心が生まれてくるのです。
問題を取り除くと怒りは長引かない
怒りは人間の本性から生まれますから、怒りっぽくない人にも、怒りは生じます。
いくつかの場面をあげてみましょう。
◆物理的な原因による怒り
ケース5 家のまわりの工事の音がうるさくて、イライラした。
ケース6 出かけようとしたら、急に雨が降ってきて、イラついた。
ケース7 乗ろうと思っていた電車に乗り遅れて、ムカついた。
◆ 対人関係による怒り
ケース8 体重を気にしているのに「最近、太った?」と言われてカチンときた。
ケース9 自分の責任でもないのにお客からクレームを言われて頭にきた。
ケース10 ささいなミスを上司からボロクソ叱られて怒りがこみあげてきた。
これらの共通点は、何でしょうか。
それは、いずれも自分が被害者だと認識していることです。
ケース5のように、工事の音がうるさければ(これじゃあ、仕事も勉強もできない、安眠妨害だ)という被害意識が働きます。
ケース9や10のように、クレームを言われたり叱られたりすることで、自分の評価が悪くなり、(名誉が傷つく、不愉快だ)という被害意識が生まれます。
怒りは、自分を守るために問題の発生を知らせてくれるセンサーのようなもの。
自分にとって問題だと思えるものに、「いやだなあ。困ったなあ」という被害意識が働き、自己防御のために怒りという感情がわいてくるのです。
このような被害意識による怒りを長引かせないには、2つの方法があります。
1つ目は、問題をすぐに解決すること。
2つ目は、問題を問題だと考えないこと。
どちらも、原因となる問題(被害)を取り除けば解決します。
問題をプラスに作用できる
自分が感じている怒りの原因を取り除けば、怒りは治まります。
怒りの原因となっている問題をすぐに解決できるものもあれば、できないものもあります。
前項のケース4のように、工事の音がうるさければ、苦情を言って、音を小さくしてもらったり、あるいは防音処置を施してもらったりするなど対処法があるでしょう。
自分ひとりでは社会的に弱いので、近隣の住民と集団で訴えるなど、しかるべき段階を踏んでおこなわねばないかもしれません。
時間はかかりますが、問題がだんだんと解決の方向に向かっているのであれば、怒りはいずれ治まっていくでしょう。
さて、ケース6のように、出かけようとしたら、急に雨が降ってきた場合やケース7のように、乗ろうと思っていた電車に乗り遅れた場合について考えてみましょう。
これらは、自分が予定(予想)していたことに反して、別の期待しないできごとが起こったために問題(怒り)が生まれています。
このように起こってしまったことについて、イライラしても何も解決しません。
解決するには、たとえば次のように考え方を変えればいいのです。
【ケース6の解決】(あれ、雨が降ってきた。もしかしたら、何かいいことがあるかもしれない。たとえば、出かけ先のクライアントが「雨の中を、よく来てくれましたね」と感謝され、仕事がうまくいくかも)などとプラス面のことを考えます。
【ケース7の解決】(予定の電車に遅れたが、今回は、人に迷惑をかけるわけではないのでよかった。でも、時間に遅れたのは自分に責任がある。これからは、余裕をもって家を出られるように朝は早起きしてバタバタしないようにしよう。)と決心します。
つまり問題をプラスに考えるといいのです。
相手より自分を変えるほうがやさしい
問題が対人関係にある場合、どうすればいいのでしょうか。
ケース8の「最近、太った?」と言われてカチンときた場合、例9のお客からクレームを言われて頭にきた場合、例10の上司からボロクソ叱られた場合、いずれも相手からの言葉や態度が影響を与え、怒りを引き起こしています。
ふつう対人関係で怒っている人は、怒りの原因は相手にあると考えます。
ですから、相手の言葉や態度を改めれば怒りが治まると考えます。
でも、相手を変えるのは容易なことではありません。
怒っている人は、自分は被害者だ、相手が悪い、ヒドイという意識があります。
その感情をそのままぶつけても、相手は受け入れないでしょう。
だれでも自分に非があることを指摘されて、受け入れるのは難しいことです。
前に述べたように、怒りっぽい人は、高慢状態にいますから、人の意見に素直に耳をかすどころではありません。
下手すれば、相手を怒らせてしまい、関係がさらにこじれることもあります。
仮に受け入れたとしても、その人が自分を変えていくには多少時間がかかります。
人間関係は、自分と相手によってできます。
相手にはひどいところがあるのでしょうが、それを気にしなければ自分には怒り(問題)が生じません。
また、他人を変えようとするよりも、自分を変えていくほうがやさしいです。
ほんの少し自分の言葉、行動、考え方を変えます。
いっぺんにできませんから、一日に一つがいいです。
そうやって自分を変えていくほうが、これから先、それによっていいことがあります。
怒りに悩まされないどころか、幸せな気持ちになって、人間関係も良くなっていきます。