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自己肯定感を高める~あなたは尊い~

 わたしの目には、あなたは高価で尊い。(イザヤ43.4)

自分がダメに思えるとき、どうしたらよいのでしょうか。

自己肯定感が低くて、息苦しさを感じるとき、どうしたらよいのでしょうか。

以前書いた記事をご紹介します。

「自分はダメな人間」

 学校に勤めている頃、「生まれてこなければ、よかった」という一文で始まる新聞記事を読んで驚きました。

 「盛岡市の教育委員会が実施したアンケートで三分の一を超える小中学生がそう答えている」と書いていたのです。

 「まさか」と疑う半面、「ついに、ここまできたか」と衝撃を受けたものです。

 アンケートを見たい、そう思って手紙を書いたところ、盛岡市教育研究所長が「研究紀要」の写しを送ってくださいました。調査対象は、市内全部の小学五年生と中学二年生でしたが、結果は、やはり報道された通りでした。

 この件に限らず、近年、日本の子どもたちの自己肯定感が低いことは、様々な調査によって、明らかになっています。

 たとえば、二〇十五年に国立少年教育振興機構が高校一年から三年を対象した国際比較調査で、「自分はダメな人間だと思うことがあるか」という質問に対して、日本の子どもは、「とてもそう思う」「まあそう思う」の合計が72.5%でした。米国(45%)中国(56.4%)韓国(35.2%)と比べて、非常に多い結果になっています。

 他の調査からも言えることは、「自分はダメだ」「大切にされていない」「価値がない」と思う子は少なくなく、一般的に学年が上がるにつれて増えています。

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大人が変われば子どもも変わる

 このような子どもたちの自己肯定感を高め、やる気や自信をもたせるにはどうすればよいのでしょうか。

 「まわりの大人が変われば、子どもも変わる」

 「親が幸せなら子どもも幸せになる」

 私はそう考えて、二十三年間勤めていた私立小中学校をやめて、時間を作り、本を書こうと思いました。大人が幸せになれる本、子どもも幸せになれる本を目指したのです。

 それから約十五年、これまでに七十冊ほどのエッセー、家庭教育書、児童書、絵本などを発行していただけました。

 講演でも「親(大人)も子も幸せになる子育てのヒント」というテーマで、全国の幼稚園・小学校・中学校・高校までで、約七万人の保護者や先生方や子どもたちにお話しさせていただくことできました。

 一貫してお伝えしているポイントは、「まわりの人を幸せにしたいなら、まず自分が幸せになりましょう」ということです。

 人は、自分がもっていないものを人に与えることはできません。まず、自分が幸せであること。であれば、まわりの人に伝えていくことができると考えたのです。

言葉によって人は変わる

 そのためのカンタンな方法は、自分の言葉を変えることです。お金もかかららず、準備もいらず、今日からできるからです。

 一般的に、悪口、陰口、否定的な言葉は、人を不幸せにします。それはできるだけやめて、心がけて前向き・肯定的・感謝の言葉を発していくのです。

 すると、自分と人との関係が変わっていきます。

  その中から、日常的に使えて、効果抜群の言葉を五つほどあげてみましょう。初めの三つは、フランシスコ教皇が「魔法の言葉」と言われたものです。

「ありがとう」

 感謝の言葉は、人も自分も幸せにする最強の言葉です。

「ごめんなさい(すみません)」

  素直で謙虚な気持ちになれ、人間関係が良くなります。

「いいですか」

あえて一言許可を求めることが、人への配慮や思いやりとなりえます。例えば、「エアコンの温度を調整していいですか」など。

「はい」

明るい返事は、自分を素直な心にし、人を幸せにできる一番短い言葉です。

「よかった()」

 人や自分や出来事を肯定すると元気になれます。私はよく失敗をしますが、そのおかげで学ぶことができて「よかったな」と考えるようにしています。

このような言葉は、自分から進んで発すると、いずれ自分にも同じように返ってくるものです。挨拶と似ていますね。笑顔で語りかければ、たいてい笑顔も返ってきます。

こんな小さなことでも心をこめておこなえば、私たちの毎日の生活はいっそう明るいものになると思うのです。

神さまと親しくなる

さて、もし、この記事を読まれている方が神さまという存在を信じているのなら、ここで特別にお伝えしたいのは、神さまとの関係も、言葉が有効だということです。

 例えば、個人的に祈るときに、「ありがとう」「ごめんなさい」「いいですか」「はい」「よかった」、これらの言葉を使って、神さまと話をしてはいかがでしょうか。

 きっと神さまは、わたしたちに相応しい良いヒントを与えてくださいます。教え導いてくださいます。

 私は洗礼を受けてから、ずっとそうしてきました。でなければ、文章を書くのが苦手で、話下手だった者が教師や作家や講演講師の仕事を継続することは、不可能でした。

 誰でも神さまと親しければ、その恵みを実感できるようになります。自分がどれほどダメに思えても、神さまから愛されているほど価値があることがわかります。これは、わたしたち神を知る者の大きな強みではないでしょうか。

 自己肯定感も幸福感も、神さまとの親しさによって高まります。その恵みを知る者がまず、神さまの愛を感じ、その愛をまわりの人に伝えていくことができればと思うのです。 

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『カトリック生活』2020年12号 連載エッセー「いのり・ひかり・みのり」第109回 拙稿「クリスマス名作映画」より

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